8 / 21
僕なんて
やっと階段を降り切ると、キッチンの方に2つの人形が見えた。
1人は黒髪でパーマが軽くかかったショートボブ、もう1人は茶髪のセンター分けでショートカット。
「カカ、味どう?」
「ちょうどいいわ、人間ならこの薄さで大丈夫よ」
ようちゃんは近くの椅子を引いて僕を座らせると、茶髪の方に向かっていった。
茶髪がカカ……お母さんか。
「トト、本当に夕馬を弟にして良いのでございますか?」
「ええよ、お前らがちゃんと見るならな」
「もちろん、めいいっぱいかわいがるもん!」
真昼と夜彦は冷蔵庫にいる黒髪の方に駆け寄っていき、コップに赤い液体を注いでもらっている。
優しい両親に優しい子ども達が笑っている……僕には眩しすぎだ。
「あの、僕なんか……ダメだと思います!」
僕は白いレースのテーブルカバーの上を両手でドンッと叩いて立ち上がった。
「人間だし、底辺のΩだし……なんにも出来ない僕なんか、家族になんて」
たくさん言いたいことがあるのに、喉に詰まって出てこないから俯いた僕。
その代わりに目頭が熱くなって、ポロポロと涙が出てくる。
ともだちにシェアしよう!