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平凡のβ
「真昼は……?」
気になったから言っただけなのに、みんなの視線が僕に注がれ、ニヤニヤと、笑う。
「みてわかるやろ? へいぼんのベータ」
真昼の顔を見ると、センター分けになったボブの髪を微かに揺らしながら平然とドロドロの赤い液体を飲んでいた。
その姿はさっきのトトと全く同じ。
平凡……真昼が一番変だと思う。
そう僕が思った瞬間、真昼の眉間に皺が寄った。
「誰が変じゃ、ボケ……」
低い声なのと口が真っ赤なのが血に見えて、ちょっと怖い。
「真昼は平凡だから大丈夫」
そう言い直したのに、より眉間が深くなる。
「誰が平凡やねん!」
この場合は、なんて言ったら正解なんだろう。
「マーにぃ、トマトジュース飲み散らかしてたらゆーたんから血をもらえないかもしれないよ?」
落ち着いた低い声で言いながら目の前に鮭のバター焼きとわかめと豆腐のお味噌汁を持ってきたようちゃん。
「それはあかんわぁ、ごめんちゃい!」
舌でぐるりと口の周りを舐めて、小さい手を合わせて頭を下げる真昼にそれが正解かと呆気に取られた。
目の前には憧れの日本食が並んでいて、思わず笑みがこぼれる。
「いただきます」
手を合わせてすぐ、お味噌汁を飲むと、味噌の温かさが喉から心へと沁みる。
次は鮭の方に箸を伸ばし、小さくしてから一口を放り込む。
「美味しい……」
噛めば噛むほど、鮭の甘みとバターの香りが口に広がる。
「良かった♪」
何故か頭にようちゃんの顎が突き刺さっている。
「それ食べたら、この街に合う髪型に変えようね」
ふふふと穏やかに笑う声にうんと穏やかに答えた僕。
左を見ると、茶髪のカカと黒髮のトトが優しそうに笑っていた。
前を見ると、オレンジ色の髮の夜彦と緑髮の真昼も同じように微笑んでいる。
どんな髪型でもいいなと思えたのはこの家族の‘‘一員’’だからなのかもしれない。
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