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ほくろ
外に出ると、雲がピンク色に染まっていたから朝だと思ったんだ。
「朝早いんじゃないの?」
迷惑かからないようにと言ったのに、不思議そうに首を傾げるようちゃん。
街灯が5m間隔であるから、ようちゃんの左目の涙袋に取れそうなくらい大きい黒子を見つけて、ちょっと悲しくなる。
「時間帯的にはお昼だけど……ここって夜にしかならないんだ〜」
簡単に言うと極夜みたいなもん、って教えてくれた。
「気温はちょうどいいし、ルールもないし……自由な街なんだよ、文潟 は」
綺麗な微笑みを見せて僕を見るようちゃん。
君のおかげで僕は自由だよ
そう思って微笑み返した僕。
すると、君の白くて長い右手が僕の左頬を包む。
「俺は、ゆーたんとならなんでも出来る……君の過去を忘れさせるのは朝飯前さ」
ペットを愛でるように何度も頬を撫でると、目元に黒い盛り上がりが見え出した。
「出会った時から好きだったけど、俺と同じものがあったらもっと好きになっちゃった♪」
ふふっと嬉しそうに笑ったようちゃんは僕の左頬にキスを落とした。
「これで朝日家の兄弟って誰にでもわかるようになったよ」
えくぼを見せて笑うようちゃんに言われて目元に触れると、しっかりとしたほくろが付いていた。
「ようにいたん、すごいでしょ♪」
褒めて褒めて! と犬だったら目一杯尻尾を振るように身体を揺らすようちゃんに、弟の方が向いてる気がする僕。
でも、認められたように感じて嬉しい僕はようちゃんに抱きつく。
「ありがとう、ようちゃん」
誰かに見られてもいいから、僕からも愛を伝えたかったんだ。
「たくさんの愛を惜しみなくあげるからね」
ようちゃんは苦しくなるくらい強く抱きしめてくれた。
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