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第17話 なんか誘われてます。

 ぜひともぼくがマナーはきちんと守る良い奴だということを歩太先輩に話してほしいが、なかなか言いづらい。  それよりも、ぼくが好きなのは歩太先輩です、と言う方がかなり言いづらい。  一緒に同じ方向の電車に乗りこんだ。  ぼくはここから二駅いったところで降りる。  歩太先輩と同じ中学なんだったら、聖先輩の住んでいる場所はそこからさらに二駅行ったところだろう。  一駅目を過ぎたあたりで、先輩がふと尋ねた。 「お前、次だよな」 「はい。あ、先輩は……」 「俺は緑ヶ丘駅を降りて、すぐのところなんだけど」  先輩が、ぼくをじっと見つめてくる。  ドクッドクッと心臓がなる。  なんか無言で見つめられるとドキドキしちゃうというか、怖いんですけど!  これはもしかして、家に来いよって意味ですか⁈ 「せっ、先輩の、ご両親とかは……」 「母親はいないし、父親も今年に入ってから海外で仕事してるから誰もいない」 「それって……」  ごくり、と唾を飲み込む。聖先輩の母親も仕事に出ているのだろうか。  そんなの、もしも漫画だったら、あれやこれやしちゃうシチュエーションでしょう! 「嫌だったら、別にいい」  ふっと視線を外した先輩はそっけなく言って伏し目になるから、まるで怒りが浮かんでいるように見えて冷や汗をかく。 『バスケ部の先輩を殴っちゃったことがあるんだよ』の一言が、こんなにもぼくを苦しめるだなんて。 「喜んでっ」と苦笑ったのは言うまでもなく、ぼくはいつもの駅では降りずに、先輩の家について行くことにした。 「わぁぁー、大きくて素敵なお家ですね」  そこは閑静な住宅街にある木造二階建ての一軒家で、先輩とは似ても似つかないどこかカントリー調のお家だった。  玄関先のプランターにはパンジーや紫陽花が綺麗に咲いていた。 「肩とか髪、これで拭いとけ」  靴を脱ごうとしていた時にタオルを手渡され、キュンとする。  ……ん? キュンとするって何?! いやいや、ありがたいと思った! そうそれだけ!  だってタイミングよくタオルが出てきたから。  ちょっと濡れちゃってたし。 「ありがとうございます」と言ってぼくは制服の濡れた箇所や髪の毛を拭いた。

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