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第32話 お誘いいただきました。
放課後、ぼくと乙葉は図書室で指導を受けながら仕事の引き継ぎをした。
装飾や絵、広報などはそれぞれ得意な生徒が分担してやってくれるので、ぼくらの仕事はカウンター業務や書架整理だ。昔はアナログだったから本の貸出をするにも手間がかかったけれど、今はパソコンで全てを管理しているからだいぶ楽になった。
「なんとか来週中には終わりそうだな。今日はもう帰って大丈夫だぞ」
「はい、お疲れ様でした」
図書委員の先輩に挨拶をして、乙葉と図書室を出る。
下駄箱で靴を履き替えて校舎の外に出た瞬間、すぐそこでペットボトルの水を飲んでいた聖先輩と目が合った。
「あ、小峰」
シャツ一枚の聖先輩は第二ボタンまであけていて、そこからチラッと見える鎖骨や喉仏。そこを流れる一筋の汗。少しだけ汗の匂いもするけど、なんだろう、先輩だったら全く不快ではない。
「先輩」
「これから歩太の家に見舞いに行くことになったんだけど、お前も来るか?」
「えっ!」
予期せぬお誘いに心が弾むが、二人で行って怪しまれないだろうか?
返事を躊躇っているうちに、乙葉がぼくの代わりに返答してしまう。
「先輩、お久しぶりですね。雫もぜひ連れて行ってあげてください」
「うん、久しぶり。分かった。じゃあほら、行くぞ」
聖先輩は乙葉に微笑みかけたと思ったら、ぼくには「早くしろ」みたいな冷たい視線を向けて、勝手に歩き出してしまう。
乙葉は「頑張ってねー」とニヤニヤしながらぼくの背中を押した。
なんか楽しんでるだろ……と心の中でツッコミつつ、先輩の背中についていく。
「あの、バスケの練習はもう終わったんですか」
「うん。お前は何してたんだ」
「図書委員の仕事を。歩太先輩、体調大丈夫なんですか?」
「さっきメール送ったら、もう良くなってはいるけど、飲み物買ってきて欲しいって。母親が仕事でいないみたいだから、行ってやろうかと思ってたんだ」
「先輩」
「何」
「歩太先輩には、ぼくらの関係は……」
ちっ、と先輩が面倒くさそうに舌打ちをする。
「言わないから安心しろ。そんなに俺の事信用出来ないのかよ」
友達にミルク発言するような人を信用しろって言う方が無理なんですけどぉー!
けど言うと余計怒るだろうから、この気持ちは伏せておいた。
電車で緑ヶ丘駅へ向かう。
降りてから途中のコンビニでスポーツ飲料水やゼリーなどを買って歩いていると、先輩はやっぱり独り言みたいに言った。
「歩太とは、いつから仲良くなった?」
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