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第33話 エレベーターの中で…

 ふとそんな事を訊かれて、ぼくは聖先輩の顔を覗き込む。  その顔がなんとなく照れているようにも見えて、ぼくはピンと来た。 「あれ、聖先輩、もしかして気になります?」 「別に、気になるってほどでもないけど」  ふふん。強がっているみたいだがぼくにはわかるぞ。  聖先輩はちょっと嫉妬している。ぼくが歩太先輩と仲が良いっていうの、気になってるんだ。  ぼくは入学式の日に初めて歩太先輩と出会った事を明かした。  そこで一目惚れをして……なんて事は言えないけど、それから徐々に距離が近くなっていき、聖先輩とたまたまカフェで会ったあの日に初めて一緒に出かけたのだと伝えると、聖先輩は「ふぅん」とまるで興味無さげに頷いた。 「ふぅんって、それだけですか?」 「なんて言って欲しいんだ、お前は」 「ん?……べーつにー」  自分でも分からなくて同じように曖昧に返事をする。  嫉妬してくれる聖先輩はかわいいけど、やっぱり本当の事を知ったら傷付くよなぁと思ってしまう。聖先輩がもっと嫌な人だったら、すぐに嫌いになれたのにな。 「ここ」  聖先輩は十階建てくらいのマンションのエントランスに入った。  おぉ、歩太先輩はマンション暮らし!  聖先輩は何度も来たことがあるのか、慣れた手つきで部屋番号と呼び出しボタンを押した。 『はーい』 「俺」 『あぁ、ありがとう。今開けるね』  歩太先輩の声は昨日と変わらずガラガラ声だった。  自動ドアが開いたので中に入り、エレベーターに乗り込んだ。  聖先輩が5のボタンと閉ボタンを押すと、ドアが閉まる。すると急に、背後にいた先輩の腕がぼくの体をふわっと包み込んだ。 「えっ、先輩?!」 「ごめん」  あまりに突然の出来事に、胸に回された手を引き剥がそうとするけど、先輩はぼくの首元に顔をうずめてスンスンと鼻を鳴らせるから力が抜けた。  エレベーターは上昇を続けている。  二階を通り過ぎたところで先輩は顔を上げ、ぼくの顎を指で持ち上げ、扇情的な目をこちらに向けてきた。 「キスしたい」 「……!!」

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