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第103話 キスと目眩

「ふっ……ぅ、んんッ……」  ぼくはいやらしい声を上げながら、聖先輩に溺れた。  口の端から垂れる液も拭うこともままならぬまま、ただただ快感を受け止める。  今度は完全に腰が抜け、三和土に座りこんでしまった。  それでも熱量のある聖先輩の唇は、ぼくから離れようとしない。 「ふぁ……あ、もう……せんぱい……っ」  鎖骨を甘噛みされて、めまいを起こしそうになる。  実際、薄らと目蓋を持ち上げると、目に映る風景がゆらゆらと揺れていた。  ぼくは聖先輩の甘い言葉とキスに酔ってしまったみたいだ。 「小峰、大丈夫か?」  ぼくがぽーっとしていたのに気付いたのか、聖先輩は一旦冷静になって体を起こし、顔を覗き込んできた。 「あ……なんだか、ぼく……」 「立てるか? というかすごい汗だな……お前、ここまで走ってきたのか」 「はい……聖先輩に会えなくなるって思ったら、居ても立っても居られなくなって」  グワングワンと先輩の顔が歪む。  そういえば体中があつい。家の中は冷房が効いているからひんやりと心地よい筈なのに、ぼくの体は未だに火照り続けている。  今日は猛暑日だし……あぁたぶん、聖先輩が格好良すぎるのがいけないんだ……  頭の中でいろんな考えが飛躍していて、少しも落ち着いていられない。  ぼくは視点の定まらない目で、聖先輩にお願いをした。 「せんぱい、あの」 「なんだ」 「み……水を、ください……」  * * *  そのスプリングベッドは、聖先輩同様いい匂いがした。  ぼくは中学の頃に着ていたという聖先輩のジャージの上下を着用して、接触冷感のシーツとタオルケットの間でモゾモゾと体を寝返った。  渡された水をガブ飲みしたあと、ぼくは本格的にダウンしてしまった。  聖先輩は少し動揺していたけど、ぼくを軽々と自分の部屋まで運んでくれて、着替えまで手伝ってくれた。  さらにはぼくの体を綺麗に拭いてくれた後、「ゆっくりしてろ」とぼくをベッドに寝転がせてから部屋を出て行った。ぼくのお世話をしているうちに自分も汗をかいたようで、今シャワーを浴びている。  そういえば、ここ最近食欲が落ちていた。いわゆる夏バテ。  連日の暑さのせいもあるが、一番の理由は聖先輩だ。  毎日ずっと聖先輩の事を考えていて、何かを口にすることが減っていた。  さっき、本当の気持ちを聞けたぼくは、きっと安心して気が抜けてしまったのだろう。  こうして聖先輩のベッドに横になれて嬉しいけれど、惜しい事をした気もする。  せっかく、いい雰囲気だったのになぁ……。

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