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第109話 『しずく』1

「袋麺って、こんなに美味しかったんですね……」  ずるずると麺をすするぼくは、夢中でスープまで綺麗に飲み干した。  午後八時。  目を覚ましたぼくは、聖先輩が作ってくれた塩ラーメンで腹を満たした。  具は何もない単なるちぢれ麺だけど、こんなにも五臓六腑に染み渡るだなんて。 「セックスした後だからな」 「ぶっ! 先輩っ、そんなはっきりとっ」  ムードも何もあったもんじゃないらしい聖先輩も、同じように丼の中身を完食した。  いま座布団の上に座っているが、やっぱりヒリヒリと後ろが痛い。  切れてはいないようだけど、随分と無理をしてしまった。  今日はそんな理由(ワケ)なので、泊まらせてもらうことにした。  まぁそんなのは建前で、本当は帰れるけど、ただもう少し一緒にいたいって話だ。  恥ずかしいから、本人には言わないけど。 「そういえば、親に連絡はしたのか」 「あ、まだでした。今しちゃいますね」  スマホを取り出して、母親にメッセージを送る。  その時、ふと思い出して聖先輩に画面を見せた。 「あの、もう一度、ぼくと交換してもらえますか」  先輩は「ん」と言いながら自分のスマホを取り出した。スマホを振って、お互いの連絡先が画面に表示されたのを確認した。 「悪かったな、あの時。あんな風に、歩太の机に押し付けて」  先輩はバツが悪そうに言うので、ちょっと胸がキュッとしてしまった。 「いえ、あの時は本当に悲しかったですけど、もういいんです。あれも聖先輩の優しさだったんだって、今になって分かりましたから」  聖先輩が、ぼくが好きになるずっとずっと前からぼくを好きになってくれたって分かっただけで、今までの悲しかった出来事はチャラになった気がした。  これからはずっと、聖先輩と一緒。  夏休みを過ごした後は二学期が来て、冬休み、お正月、三学期、そして……  え? 聖先輩、もう高校卒業じゃない?    

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