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都会編 3

松浦と分かれて、二人は明彦のマンションに向かう。 「飯と、何だったらビールとか買ってくか?」 明彦がそう言うと大和はすまない、とポツリと謝って来た。 「もうこうなったら飲もうぜ。今更喧嘩しても仕方ないだろ」 ただし給料前だから宅飲みだぞ、と明彦がいうと大和は笑う。大和とこんな風にまた普通に話できるようになるとは思わなかった。 (いつまで経っても女々しいなあ、俺) 「ここは流石に星が見えないんだな」 空を見上げて大和が呟いた。街灯と住宅街の灯りで星が見えない。 「ああ。だからあっちに行った時に驚いたんだよ。気持ち悪いほど星があるなあって」 「気持ち悪いって…」 マンションのエントランスから五階まで進み、玄関の鍵を開ける。 部屋に入ると大和に座るように促す。 男の部屋にしては整理整頓されている明彦の部屋を興味深そうに大和は見ていた。 「何も面白いものなんかねえよ」 買って来た飯とビールを置いて早速食事に入る。 それから。 大和から向こうの近況を教えてもらい、明彦はそれを懐かしそうに聴いた。 事務や運営のサポートは役割分担をして行っていること。最近は立川が率先してくれていること。山根さんが若いお嫁さんをもらってみんな大騒ぎしたこと。 半年しか過ぎていないのにみんなに逢いたくてたまらなくなる。 酔いが幾分か回って来たのか、明彦はとろんとした目で懐かしいなー、逢いたいなー、と床に寝転ぶ。 「そろそろ寝るか。お前風邪引くぞ」 「毛布取ってー」 どっちが客かわからんじゃないか、と大和は笑う。 「…昔に戻ったみたいだな」 毛布に包まりながら、明彦は大和を見る。 「そーだな。向こうでも宅飲みやったもんなあ」 「明彦」 「ん?」 不意に大和の顔から、笑顔がなくなる。 「お前、何で最後の日、俺から逃げた?」 「…さあ何でだろうな」 「はぐらかすなよ」 明彦は大和から目を逸らして毛布を頭からかける。 「明彦」 (やめろって…) 目を瞑りやはり連れてくるんじゃなかったと後悔し始めた。 知られてはならない想いが心の中で疼く。 不意に大和の手が毛布にくるまった明彦に触れる。 (もうダメだ) ガバッと毛布から出て明彦は大和を睨む。 「俺に触れるな!辛いんだよ!」 突然怒鳴られ、大和が目を見張る。 「逃げた理由、教えてやるよ…!これ以上お前と一緒にいたくなかったんだよ!お前といると…」 その先の言葉を、一緒飲み込み、観念したかのように明彦は呟いた。 「俺はお前をどんどん好きになっちまうんだ。友情じゃなくて、恋愛対象として」 その瞬間の大和の顔を見ないように明彦はうつむいていた。そのまま、横になる。 「気持ち悪いだろ。もう忘れてくれ」 大和に背を向けたまま、明彦は朝まで毛布にくるまっていた。 時折、大和の気配を感じながら。

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