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都会編 5
奉納のあと、明彦がおずおずと挨拶に行くとメンバー達は驚き、大喜びした。
さっさと片付けて飲みにいかんと!と立川の声にみんなが賛同した。気がつけば松浦も一緒に居酒屋の暖簾をくぐった。
「いやー、まさか明彦が見に来とるとは思わんかったわー!」
立川が赤ら顔をして明彦の背中をバンバン叩く。
「痛いっすよ!」
すっかり上機嫌になった明彦は、タコワサビを食べながら笑う。こうして大笑いしながら呑むのはいつぶりだろうか。
人当たりのいい松浦も、メンバーに気に入られてすっかり出来上がっている。まるで初対面とは思えない。
大宴会は夜遅くまで続き、気づいたら終電近くまでになっていた。
メンバー達は近くのホテルまで徒歩で帰り、松浦は終電で帰ることとなった。
明彦はと言うと、千鳥足で一人だと家にたどり着けそうもなかった。仕方ないなあ、と松浦は住所を書いたメモを大和に渡した。
「タクってそいつんちに泊めてもらいなよ」
「…押し付けてませんか」
「まあそうとも言うね!よろしくー」
手をヒラヒラ振ると駅へと向かっていく。
「なに、大和、またうち来るの」
明彦がぼんやりした顔で呟いた。
「悪いかよ」
千鳥足の明彦をなんとか支えながら、家の鍵を開けてようやく帰宅した。
家に着いた途端、明彦はキッチンへと向かいコップ一杯の水を飲み干す。
そして大和の方へ振り向いた途端に、土下座した。
「大和、ごめん!」
「どうした急に」
「俺、逃げてばかりでごめん!あの日、大和にひどいこと言ったままこっちにきて。先週も自分の思いだけ言って逃げてばかりで」
捲し立てる明彦の頭を大和が2回、叩く。
「いってーな!」
顔を上げると大和の端正な顔が目の前にあって、明彦は驚く。近い、と思ったその顔が更に近づいて大和の唇が明彦の唇を塞いだ。
(…え…?!)
パニックになった明彦の身体を大和が抱きしめる。
「俺も鈍いけど、お前も鈍いな。…俺はこの前のお前の気持ち聞いて気持ち悪いなんて思わなかった。むしろそういうことか、と気付いたんだ」
耳元で囁く大和に明彦の身体は硬直したまま動かない。
「俺も、お前が好きだ。だからもう逃げんな」
キッパリと断言する大和に耳まで真っ赤になる明彦。
恐る恐る、大和の顔を再度見る。すると大和もまた真っ赤になっていた。
力が抜けた明彦がふいに笑い出す。
「なんだよ、俺ら。両思いじゃんか」
大和の身体をギュッと抱きしめる。何と遠回りしたのか。この半年間もったいない事をした、と笑う。
「じゃあさ、とりあえず。携帯番号教えてくんない?」
その後は今までのすれ違いの時間を埋めるかのように、長くキスをした。
お互い舌を絡めながら濃厚で甘いキスを重ね、気持ちをぶつけ合う。
「ん…」
大和の背中に腕を回し、何度もキスをする。
ふいに大和が明彦の固くなっているそこに手を這わす。
ビクッと明彦の身体が揺れた。
「お前、男同士どうやるのか知ってんの」
「しらねぇよ!ただ触れたいだけ」
次、いつ会えるか分かんねえしと言う大和に明彦は微笑んだ。
(なんだ、コイツの方がよほど俺に惚れてるじゃん)
そんな事を考えながらも熱くなっていく身体を、大和に委ねた。
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