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地下牢にて・・

透明な水泡に映る瞳は紅く、水面の奥に炎を宿しているように見える。 重みを失った足は緊張と恐怖でガクガクと震え、拘束されていた腕はくっきりとその痕跡を残したままだ。 千切れ破れたままの衣の袖から覗く手首と先は未だ痺れが取れないせいか、思うように動かすことが出来ない。 柔だと詰られた白肌は触れた男たちの唾液と乾いた精でパリパリと薄皮の如く重なり、実に不快だった。傷一つ無かったはずの皮膚は鞭打ちと蹴りで所々焼け切れ、赤く擦り切れたその傷はジンジンと痛みを増したままどうすることも出来ない。 ・・・だが。 それでも、それでも。 今の私に何かを成すことが出来るというのなら・・それに縋ってみるのも悪くないのかもしれない。 一度開いた眼をゆっくりと閉じる。大地に根を張る木々を思い浮かべながら息を吸い吐き出せば、不思議と重く怠かったはずの身体が先ほどよりも軽くなり、手当てをされた上から増える傷は赤く腫れあがり熱を帯びた身体が少しばかりマシになったような気さえしていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 自分の肉体のはずなのに、どこか自分のものではない感覚。 不気味なほどの静寂が周囲を包み込み、フワフワと浮き上がっているような浮遊感はそのまま維持され、固く根付いたままの芯はどっしりと構えるように微動だにしていない。 青年は一度閉じた瞼をゆっくりと持ち上げた。 「・・・・・」 眼前に映るは橙色の光を放ちながら揺らぐ柄。 光の渦に包まれる様に浮かぶ柄の先に刃は無く、クルクルと回転しながら青年を見ている。 迷いの無い瞳。その先に怯えの色は無く、全てが青年と柄を中心に回っているかに見えた。 『・・・今度の持ち主はお前か?』 脳内へ響くその声は迷いなく眼前に立つ青年、彩・桂樹に向けられている。 その声に。その光に。目を逸らすことが出来ないまま、彼はジッと青白く光る先を見ていた。 『そうだ。我が名は・・・・彩・桂樹』 震える声で絞り出すように放った声に呼応するように柄がきらめく。 この選択が果たして正しいものであったのかは、今でも分からない。 けれど、縋ってでも手に入れたいものが力であるなら、私は-・・・ 六王記・宵の章 残月記 三の月、時刻は深夜の零時をゆうに過ぎていた。 両腕を拘束されたまま、放たれた精がべっとりと桂樹の腰に貼り付いたまま、甘い花が強く香るその肌は幾度も男達に凌辱されたせいで、段々と熱を帯び、妖艶なものへと変化していこうとしている。 「・・ぅあっ・・・」 形の良い眉が苦痛に歪み、しっとりと汗ばんだ肌に髪がはりついたままだ。 ふるりと震える腰を余所に桂樹の腿から足首へと白濁した雫が伝い、パクパクと酸素を乞うその唇に眼前の男が吸い付くと「ぅ・・ぅぅ・・」と桂樹の口から甘い声が漏れては溶けていった。 胸の突起を指で弄ぶようにつつきながら、男の舌がぬるんと桂樹の咥内へ滑り込み、ぴちゃぴちゃと舌を絡ませると、彼の瞼が無意識にゆっくりと閉じていく。 「うぐっ・・!?」 男の舌に意識を向けていた桂樹の背が急にびくりと揺れ、とっさに離れようとしたものの、腕の拘束具が微かに揺れるだけでびくりとも動かない。 「ここも可愛がってやらねえとなぁ」 その声に桂樹の顔がサッと青くなる事も構わないといった様子で、背後に立つ男の太い腕が、眼前に立つ男の雄と桂樹の雄へと伸び、両者の雄を両手で掴むと、重なり合わせたまま上下に緩く扱き始めた。 「ふぁっ・・ぁあっ・・」 擦れ合う度に桂樹の唇からは高く甘い声が零れ、嫌々と懇願するように首を左右に振り続けるが、擦り合わせるその動きは止みそうも無く、桂樹の形の良い整った眉だけが段々と苦痛に歪んでは眉間の皺を濃くさせていった。 淫猥の色が増す闇を遮るように、じっとりとした視線を向けたまま、その様を黙って見ている男達の息遣いが足先から頭部まで聞こえてくるかのような緊張感。 熱を帯びた視線の全てが桂樹の脳内をジワジワと浸食していく。 それは渇きに飢えた喉によく似ていた。 「・・・・ぁ・・っ・・・うっ・・ああっ・・」 ぬちゃぬちゃと淫猥な音を響かせながら尖端から滴る蜜を絡ませるその動きに呼応するように眼前の男の口からは「ぉ・・おぉぅ」と息が漏れる。 「・・ぅ・・・っん・・」 つま先立ちの姿勢のまま、桂樹の足が何度も上下に揺れ、眼前に立つ男の舌を自ら絡ませては何度も吸い上げた。 桂樹が見上げて伸ばしたその舌を吸い上げるように男の舌が重なり、ぬるんと湿り気を帯びたその舌はやがて、ちゃぷちゃぷと荒い水音を生み出していく。 その音を耳にする度に桂樹の肌はしっとりと汗ばみ、背後から伸びた両手も構わないといった様子で自ら腰を前後に揺らしてはその快楽に身を任せようとした。

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