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地下牢にて-7
「なっ・・なぜ・・っ・・」
男の表情は変わらない。
じっとりと汗が伝う頬を腕で拭うと荒い手つきで前髪をかき上げたまま、鋭い目つきで桂樹を見つめ、先程よりも低く、それでいて情を感じられない刃のような声で男が呟いた。
「どうしてだと?決まっているだろう」
有無を言わさないその声と瞳の奥に潜むそれが憎悪であると桂樹自身が気づくまで、そうそう時間はかからなかった。
「・・・っ・・ひっ・・っ」
「お前が、王族だからだ」
嘘の感じられない瞳が、抉るように桂樹の瞳を貫いている。
獰猛な獣が獲物を捕らえ、じわじわと嬲る様な仕草で、掴んでいた桂樹の雄の先端をぎゅうっと強く握るとその瞬間、桂樹の背に電流が走った。
「・・ぐうっ・・!」
男が精を吐き出した雄を深く埋め込んだまま、抜かずに再度腰を揺り動かし始める。
腹の底から這いあがって来るかのような衝撃と嫌悪感。その両方が容赦なく桂樹自身を掴んでは離そうとしない。それどころか、再度与えられるであろう痛みに抗う術を持てないまま、桂樹はぎゅっと目を閉じるしかなかった。
「ずいぶんと余裕があるじゃないか?なあ?」
「・・っ・・」
男のその声に浮き上がる水泡がパリンパリンと崩れるように溶けていく。
「時間はたっぷりある。せいぜい壊れんようにがんばるんだな」
「・・うあっ・・!」
突き放すような男の声と与えられる痛みに桂樹の背が弓のようにしなった
男の雄を受け入れた桂樹の花蕾のその奥が求めるように男の雄に吸い付いていく一方で、男から与えられる動きに桂樹の腹部は強い圧迫感が勝り、快楽と言うよりはむしろ不快に近いものだった。
「だっめ・・ぅん・・以上されたら・・さっ・・裂ける・・っ・・」
「うん?聞こえんな」
抉られるように突くその先が鋭利な刃物のように鋭く、そして力強くもあった為、薄い粘膜の壁を今にも破られてしまうのではないかという感情がグルグルと渦を巻くように桂樹の脳内を支配しようとしている。
それはもう恐怖としか言いようがないものだったが、不思議な事に、恐怖と今まで感じた事も無かった欲望という名の快楽の種が交差し、桂樹自身を惑わせようとしていることもまた事実ではあったのだ。
『こっ・・こんな・・』
恐ろしい。けれどその先を見たい。
不快なはずなのに、粘膜が擦れ合い熱を帯びることで心地よさが増し、離れたくないとさえ願ってしまう。
『こんな・・自分は・・知らない・・っ』
そう脳が叫ぶ。声にならない声をあげる自身を冷静に何処かで見つめながら。
・・・快楽に潜む闇という名の欲望。それらが容赦なくこの閉鎖した空間の中で桂樹の何かを追い詰めようとしている事だけは確かだった。
その変化に背後の男が気付いたのだろう。彼はニヤリと口角を上げると速度をわざと弱めては桂樹の力を抜かせ、桂樹が息を吐いた瞬間、即座にパァンと腰を打ち付けた。
「ひぎぃ・・っ!・・う・・・あ・・・」
唇を強く噛み、ガチガチと震える身体をどうする事も出来ないまま、桂樹の眼が見開かれていく。見開かれた両目がじわじわと歪み、同時に熱い水滴がぼろぼろと零れては頬を伝い床へと落ちていった。
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