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地下牢にて-8

桂樹の雄を強く扱きながら男が激しく腰を打ち付ける度に、拘束具の金属音だけが空しく響き、鎖を激しく揺らす桂樹の声が段々と悲痛と嗚咽へと変化していったのだが、それさえも興味が無いといった様子で男が腰を動かしている。 彼の視線は桂樹を見る観衆の目線とは異なり、どこか冷めているようにも見えた。 「・・・っ・・いっ・・やだぁああ・・・!」 その様子を食い入るように見つめている観衆の背後で、冷ややかな目線を投げている三名の男達が退屈そうに息を吸い吐いている。 透き通るような銀色の前髪を垂らし顔の半分を隠した男がスッと眼鏡を外しながら 「やれやれ。これの尻拭いをこの次、私がしなくてはいけないとは」 と面倒くさそうに呟いた。 ポツリと呟いたその声を耳にしてか、彼の隣に立つ男はハハッと軽く笑みを浮かべながら 「良いじゃないか。可愛がってやれよ」 と銀髪の男の肩を抱き寄せながら囁いている。 「あーあーあー。嫌ですよ、もう」 そのやり取りを横目で見ながら椅子の背に凭れ掛かったままの男の声はどこか楽し気に 「アッハハッ。あんなに揺らしたらそのうち裂けちゃうかもネ?」 と首を左右に揺らしながら呟くと、ため息交じりの声が漏れた。 「容赦ないですからねえ。あの方は・・」 「うん?ちょっと待って?」 「・・?」 「そろそろ、堕ちるんじゃない?」 椅子の背に持たれたままの男がクイッと顎で前方を示している。 「うん?」と首を傾げたままの二名が「あっ」と無意識に呟いた。 半開きになった唇が酸素を乞うように。 吊るされた腕の先から奏でられる金属音が朽ち堕ちるように音を失ってゆこうとしている。 無機質なはずの水泡は泡と溶け、官能に色づいた嬌声へと変わる光景が確かにそこに存在していた。 失っていたはずの肉体に熱が再び与えられ、痛みはやがて快楽へと果てゆく。 ぐちゅりと淫猥な水音が花蕾から溢れる度に淫猥の色は濃く、その度に腰を打ち付ける男の口が嗤うような表情を見せた。 「ずっと果ててないんだっけ?あのお姫さん」 「そうだな。そう聞いている」 「じゃあ、もうすぐでしょうね。私の出番にならなくて残念です」 「あっはっは!言うよねえ。お前、あいつよりひっどいくせにぃ?」 「おや?心外ですね。私のは、ああまで酷くはありませんよ」 「そろそろか?堕ちるぞ」 壁に凭れかかりながら笑う男の声に誘われる様に、他の男も同じように桂樹に視線を向けた。 最初は拒んでいたはずの桂樹の花蕾が吸い付くように男の雄を受け入れ、ぬっちゃぬっちゃと粘着質独自の音を響かせている。 男が動く度に、背後から伸ばされた桂樹自身を掴み扱く手もまた同時に揺れ動き、その度に桂樹の口からは甘く艶やかな声が幾度も零れては照明の奥へと溶けていった。 「・・っ・・はっ・・あぅぅっ・・」 「ああ。良い感じになったじゃないか?なぁ?」 「・・うぅっ・・っあ・・っ・・」 最初は拒み、縮んでしまっていた桂樹の雄が男の動きによって段々と艶を帯びていく。 与えられる快楽は最初の頃のような痛みではなく、疼く甘い毒へと変化しようとしている。 それはひっそりと地を這う蛇と非常によく似ていた。 男の瞳が、より冷たいものへと変化していく。 「うっ・・?・・っあ・・っ・・」 突然、桂樹の腰がビクビクと強く揺れ動いた。 その反応を冷めた眼で見る男の手は止める事無く桂樹の雄を扱き続けている。 男が腰を動かす度に、乾いていたはずの桂樹の自身は尖端から漏れた蜜のせいで潤いを取り戻し、男が動かす手によってぬちゅぬちゅと淫猥な音を響かせ続けているのだ。 すっかりと固くなったそこは男から与えられる快楽のその先を待つように、ぴったりと張り付いて離れそうも無い。 「ああ。凄いな・・ここもこんなに固くして」 「・・いっ・・ぁ・・っ」 「果てたいのだろう?皆の前で果てるがいい」 「・・ひっ・・・・うっ・・あっ?・・・っ・・ふうっっ・・!」 桂樹の背にぴったりと密着するように男が彼の耳元で囁いている。 喉の奥から魅せるような深みのある低い声に、桂樹の身体が一瞬で熱を帯びた。 男の心音が桂樹の肌に触れ、同時に男の上気した肌と荒い息遣いが彼の背に触れる度に、桂樹の中で拒んでいたはずの何かが音も無く壊れ、同時にパチパチと蕾が花を咲かせるように別の何かを創り出そうと蠢いている。

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