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地下牢にて-9

男が抉るようにある一点を二度突くと桂樹の口から甘い嬌声が漏れた。 「・・あっ・・っ・・ううっ!・・・っ・・うぅん・・」 弱い一点を集中的に攻められ、食らいつくような男の口付けを受けた桂樹が、自ら乞うように男の唇に吸い付いている。唇を離さないまま、縺れた様に絡み合う舌の感触に身を任せると、男がそれに答えるように彼の腰を揺らし、快楽と言う名の熱に身を任せたまま、ほぼ同時に精を吐き出した。 その瞬間。唇を男に塞がれたまま、桂樹はここではないどこか遠くを見ていた。 『・・・あ・・・れ・・・?・・・わたしは・・な・・に・・を・・?』 例えるならば、コポコポと水を吐きながら水底に沈むように。 透き通る日差しを掴もうと水面へ向かって伸びる手を見るように。 澱む自身の仄暗い過去に蓋をするように。 自身ではない、誰かの手によって顔を塞がれ呼吸も出来ぬまま、奥へと落ちていく感覚。 浮き上がろうと藻掻き、バシャバシャと何度も抗い水を搔いたとしても、びくりとも動かない。それどころか溺れて沈んでいきそうな恐怖心。 『よぉ・・・久しぶりじゃねえの』 自分ではない誰かの声。真っ暗だった視界に映る薄く透明な何かが桂樹に向かって両手を伸ばしている。それが肉体を成していると分かるまで暫しの時間が必要だった。 『声も忘れたか?桂樹』 自分の名を呼ぶ誰か。その誰かが自身に向かって両手を伸ばしている。 『・・・・あ・・れ・・』 その中で、桂樹は脳裏に一瞬、見知らぬ者の顔を見た。 「呆けてる場合じゃないぞ。ホラ!」 「・・っあ・・!」 いつの間にか気を失っていたのだろう。男の声に意識を取り戻した桂樹は男を受け入れたまま、すぐに我へと返った。精を放ったはずなのに未だ、外される事のない鍵は変わらない。 それどころか、先程よりも太くなっている気がして、すっかりと青ざめた桂樹の反応を楽しむように誰かが野次を飛ばして笑う声だけが地下牢に響いた。 「アッハハ!終わるわけないじゃーん。まだまだ他にいーっぱい居るんだよぉぅ」 「・・・ぁ・・・」 そこで初めて自身への責めが終わっていない事に気付き、全身を駆け上がる羞恥の熱と快楽の波が一気に押し寄せ、自身を見る観衆へと向かったのはすぐの事だった。 「・・っ・・」 十名はいるだろうか。先ほどと変わらない人数の男達が食い入るように桂樹を見つめている光景が広がっている。 その視線が桂樹の秘部へと集中しており、いやな予感を残したまま、その視線を辿ると同時に桂樹の唇がカタカタと震えはじめた。 「・・・っ」 尖端からは先ほど桂樹自身が放った精が男の指を濡らし甘い芳香が僅かに広がっている。 男がゆるゆるとした手つきで扱く度に、びくびくと蜜を垂らしながら、再度、反り立っていく反応が今は憎らしい。 にちゃにちゃと淫猥な水音に混ざるように観衆の息遣いも荒くなっていった。 「・・あ・・っ・・」 「・・・・ほう?姫君の此処はまだ物足りないと見える」 「・・・っ・・ぁ・・」 「なんなら吸って貰うか?今以上に早く果てるようになるぞ?」 「・・ひっ・・」 「ああ。そういえばお前も一応は男だったな。なんならここに女でもあてがうか?」 その台詞に桂樹の顔が更に青みを増していく。 男の声と自身を見る観衆の視線を一点に受けながら桂樹は何度も首を左右に振った。 「・・やっ・・いやっ・・見な・・っ・・!」 「うん?見て欲しいのだろう?ここも私の物を受け入れたまま、満足そうに吸い付いて来るじゃないか」 ざらりと耳たぶを甘く噛みながら息を吹きかけて話す男の低い声に桂樹の腰がビクビクと反応を返している。 「そっ・・んな・・こ・・と・・なっ・・」 「違う?何が違うというのだ?」 「・・ひっ・・」 桂樹が何とか逃れようと身を捩るが、男の腕が桂樹の腿を掴んだまま放そうとしない為、態勢を崩すことが出来ないままだ。 「・・・うっ・・ううっ・・」 男が掴んでいた内腿から手を離す。内股になったまま項垂れるように顔を下ろすその光景を目にしてか、観衆から次々に声が上がったのはそれからすぐの事だった。 「・・おっ・・おれ・・もう・・」 不意に先ほどまでの男達が見せた行為に当てられたのだろう。 年若い青年たちが眉間に皺を寄せたまま、衣を強く掴んでいる。 その様を見てクッと口角を上げながら、 「ああ。長い事借りたままで失礼したな。諸君。私は離れよう」 そう話しながら、男が埋めていた桂樹の花蕾から一気に自身の雄を引き抜くと、ごぽりと白濁が吐き出され、同時に眉を顰める桂樹から小さく甘い声が漏れた。 白濁は桂樹の腿を伝い、床へと落ちていく。男がその光景を目にしながら青年たちを見れば、その視線に弾かれたように年若い青年軍妖達の足がそろりと動き、伸びる腕を眺めながら桂樹は再び『嗚呼・・』と暗く瞳を閉じたのだった。

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