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第2話

 兄と弟。  ますますPTAの方々が黙っていないだろう関係性。  天然な人なら、兄に座薬をうってやる健気な弟と思ってくれるかもしれない。 ははは、もっと恐ろしいものを受け入れなければならないんですよ。僕は。 「自分の体の変化にドン引きだよ」 「引いているのか?鏡見せてやろうか。すっかり発情期のオメガの表情だぞ」 「お前の綺麗なツラ見た後で、自分の顔見たくない」 「何で、すげぇ良い顔なのに」  顔が良いのはお前だ。そして、僕の顔は普通だ。  まあ、兄弟とはいえ血の繋がりはないから、差があるのは当然だ。  僕と昌樹は、僕の母と昌樹の父が再婚して兄弟になった。連れ子同士だ。  出会った頃は、僕よりずっと小さかった昌樹だったが、流石はアルファ。今では僕が見上げないといけない。  声も別人のように低くなった。  兄弟になってから十年以上経つが、昌樹は僕を兄と呼んだ事はなかった。アルファの昌樹がベータの僕を兄と呼ぶことはないのだろうと諦めていた。  突然できた弟にどう接したものかと当時は困惑もした。  とりあえずは、年少の友人に接するように接してきた。アルファということで、遠巻きにされる部分もあった昌樹は、家で過ごす事も多く、僕が相手をすることもあった。  ただ、それでもやはり兄と呼ばれる事はなかった。  僕達の父は、そんな昌樹をたしなめることもあったが、その度僕は、大丈夫だと答えた。  僕は大学から家を出たが、何を思ったか昌樹も僕と同じ地方の大学に進学したため、僕の家に転がり込んだ。今年の春、晴れてキャリア組になる。  そして現在に至る。  こういう関係になったのは、数ヶ月前のことだ。  昌樹がリビングの椅子にジャケットを掛けていたのだが、床に滑り落ちていた。掛け直しておこうと思い、ジャケットを拾い上げたところで、僕の体に異変が起こる。  無意識の内に僕は巣作りをしてしまっていたのだ。しかも体をあんな体液やこんな体液で濡らしていた。  そこに昌樹が帰って来て、種明かしをされたのだ。僕がオメガへ変貌するように、僕が寝ている間やらなんやらに色々仕込んでいたという。  その時の昌樹の表情が忘れられない。  精悍な顔立ちに、狡猾な笑み。正に計画通りといった顔だった。  それもそうだろう。丸々と太った鴨が美味しそうな葱を背負ってやってきたようなものだ。  オメガに変化して、理性が揺らいでいる中でも、兄弟という言葉が頭をよぎる。  その言葉を盾にしてみたが、効果はなかった。それどころか衝撃的な事を言われてしまった。   俺は、あんたを兄と思ったことはない。 初めて会った時から、あんたを俺のものにしたかった。 父さんと義母さんの目が届かない今がチャンスだと思った。  あんなに儚げな少年が、その綺麗な顔の下でそんな事を思っていたなんて。  今はマッチョだけれども。  ここまで言われた僕はどう感じていたのかと言うと、正直嫌な感じはしなかった。実家に住んでいた頃から昌樹を目の保養としていた部分もあった。ここに住むようになってからは、紳士的な昌樹の対応にも好感を持っていた。  ただ、兄弟という砦があったから、あまり踏み込まないようにしていた。  しかし、そんな砦があったとしても、結局僕も昌樹の事を好ましく思っていたのだ。  そんな自分に気がついた僕は抵抗を止め、昌樹の熱い奔流を受け入れた。  簡単に言うと、あんなところやこんなところを舐められたり、抉られたりして、最後にうなじを噛まれ、はいこんにちは。というやつだ。 「ちょっと余裕ある表情になってる」 「そんな訳あるか。こちとらまだ二回目だぞ」

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