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第3話

 病院で正式にオメガに変化している事が証明された。そして、発情期が始まる日とされたのが、今日。予定通りだ。  前の時は余裕がなく、自分の体がどうなっているか、分からなかった。  だが、二回目の今は良く分かる。何というか、ムラムラする。ベータの頃もそういう事はあった。しかし、その頃と違う場所が熱を持っている。  昌樹に創られた、昌樹の為だけの子袋。昨日までは意識もしなかったそこが、胎内でひとりでに膨らみ、潤っているのがわかる。潤いが器から溢れて、体の外まで染み出している。  逆ウォッシュレット状態だ。いや、台無しだなこの表現。  とにかく、僕の体は、今昌樹を受け入れる準備が整いつつある。  勿論、発情期以外でもそういう事は出来るのだろうが、昌樹からは求められたことはない。これからも、あるのかはわからない。 「淳、良い匂いがする」 「何だ。親父臭いな。お前、顔がいいから許されてる発言だぞ」 「淳は俺の顔が好きなのか」  これ見よがしに顔を近づけてくる。 「そりゃ良い顔だと思ってるよ。でも、顔だけじゃないよ」  腕を伸ばして頭をポンポンと叩いてやる。  黒い短髪が、手を程よく刺激する。 「何かその余裕、むかつく」 「だから余裕はないって……ん」  僕は今、下半身だけ生まれたままの姿にされ、上半身は、ブラウスを着ていたのだが、昌樹はボタンを開け、僕の胸に吸い付いた。 「バカ、何も出ないぞ」 「男のオメガでも、人によっては出るらしいぞ」 「はあ!?」 「まあ、子供を産んだときだけらしいけど。男だって乳腺はあるしな」 「今の僕じゃ出ないぞ」 「いつかの為に今から育てておく」 「いつかって……義父さんと母さんに何て言うんだよ」 「父さんと義母さんは知ってるぞ」 「はあ!?」  本日二回目のシャウトである。 「俺が言った」 「え、何て?何て言ってた?」 「大賛成って訳じゃなかったけど……変なのとくっつくよりはいいかって」 「え?そういう問題?」 「でも子作りはもう少し先だな。俺まだ、安定してないし」 「子、子作り……」 「もう番になったんだから、諦めろって」  そう言って、また僕の胸に顔を埋めた。確かにそこの刺激も、快感を生んでいるのだが、さっきまで弄ばれていた子袋が、切ない。  僕はたまらず泣き出してしまった。  欲しいと言えばそれで良いはずなのに、何故か言葉が出てこない。  僕に出来るのは、涙を流す事だけだった。 「どこもかしこも大洪水だな……」

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