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不思議な夢(2)
ぴりりりりりり
はっ、と大きく息を吸い込み、千早は目覚ましのアラームを止めた。
なんだ…夢か…それにしてはリアルな…雨に濡れた肌にペッタリとへばり付いた布の気持ち悪さや、雷が落ちた後の焦げ臭さ、それに…
狂おしい程の甘い匂いと、抱きしめられた腕の強さと心地良さは、あれは一体…
ふと、頬の冷たい感触に気付いて、手の甲で拭うと濡れていた。
何で?どうして泣いてるんだろう、俺。
一度起き上がったものの、泣いている訳も分からず、また布団に潜り込んだ。
ちりりと痛む胸の疼きはまだ残っている。
千早は、幼い頃から時々不思議な夢は見ていたが、みんながよく見る絵空事だと思っていた。
しかし、この祖母 の家に帰って来てからというもの、ほぼ毎晩不可解でリアルな夢を見るようになっていた。
出てくるのは自分と、自分を『妻』と呼ぶ男性。
同性なのに、全く嫌な感じがしない。
夢の中の自分はそれを『当たり前のこと』と受け止めている。
とても…とても、愛されているらしい。
彼の言葉や態度の節々でそう感じる。
おまけに、それ以上に自分も彼のことを愛しているようだ。
その日によって内容は異なる。時代背景も。
今朝の夢は、何かの誤解が生じて彼の元を飛び出し、身を引こうとしていたらしい。
夕べは…自分を守るために命に関わるような傷を負った彼を泣きながら必死で看病していた。
その前は、何と言うか…2人が愛し合っている場面だった。
「俺って、欲求不満なのかな…」
誰に言うともなくひとり言が口から出た。
相手が女性でなく逞しい男性なのはどうしてなんだろう。俺はノーマルなはずなのに。
「千早ーっ!いつまで寝てるの!?」
「はーい!今行く!」
階下から自分を起こす志津の声が聞こえて、千早は慌てて布団から飛び出した。
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