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見えないはずのモノ(2)

味噌汁や卵焼きのいい匂いが漂っている。 お腹がぐうっと音を立てて鳴いた。 「おばあちゃん、おはよう。」 「千早、おはよう。今のんびりできるからって朝寝の癖をつけちゃダメよ。」 「うん、分かってる。」 相変わらず口喧しい志津の小言を聞き流して、テーブルに箸置きや湯呑みをセットしていった。 ん? 2人だけのキッチンの空気が動いた。 何かがいる。やっぱり、いる。 何とは断言できないが、違和感が。いや、いつも以上の存在感を感じる。 決して千早に近付いてはこないが、朝から何なんだ。 今朝の夢の名残りと相まって、千早は思わず叫んだ。 「おばあちゃん!」 「あら、びっくり。何?」 「“何か”がいるんだよ!最近ますます気配を感じるんだ。 何とは言えないんだけど…俺、何か憑いてるのかな? ここに来てから変な夢ばかり見るし。 俺、どうなるの?何が憑いてるの?」 祖母は千早を見つめた後、その周囲に咎めるような視線を送ると 「大丈夫。絶対に悪さはしない。 逆に千早を守ってくれてるの… そのうち、時期がくれば見えるわよ。 だから…見えなくても時々は『守ってくれてありがとう』ってお礼を伝えるといいわ。 喜んであなたを守って支えてくれるはずよ。ね?」 志津は千早の右側に向かって同意を求めるように声を掛けた。 すると、かき消すようにその気配は消えてしまった。 志津は、母方の祖母だ。 なんでも由緒ある神社の血縁らしかった。 “らしかった”というのも、志津は自分のことをあまり話したがらず、千早も彼女が嫌がる話題を振る必要はないと感じていたので、聞き出すこともしなかった。 ただ、知る人ぞ知る『見える、祓えるひと』ということで、一部の高貴な方々がお忍びで志津の元に通い、その恩恵を受けていたことは幼い頃から薄ぼんやりとした記憶の中にあった。

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