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見えないはずのモノ(4)
千早は何が何だか分からず、その場で固まっていた。
だが、にこにこ笑うばかりで一向に祓おうとしない志津の態度に『この子は害を加えない』と悟った。
「ちょっ、待って…子供がそんなことしないで…ねぇ、ちゃんと顔を上げて…
その“千早様”って言うのも止めて。
あかばね…くん?何でそんな格好してるの?
俺の側にずっといたのは…君?」
「千早様…こんな姿 ではございますが子供ではございません。赤羽は嬉しゅうございます。
やっと、やっとお目にかかることができました…
志津様、ありがとうございました。」
ぽろぽろと大粒の涙を流しながら、赤羽と名乗る男の子は、志津にも頭を下げていた。
暫くフリーズしていた千早は、はっと我に返ると
「おばあちゃん、一体どういうこと?
この子は俺の何?妖 ?
俺を守るってどういうこと?」
矢継ぎ早の質問に、志津はころころと鈴が鳴るような声で笑った後
「赤羽、ほらご覧。千早が驚いて混乱してるじゃないの。
…まぁ、いいわ。赤羽が姿を見せた、ということは、他の者達も目覚めてくるでしょうから。
時期がきた、ということなのね。
千早、赤羽に手を差し出して。」
戸惑う千早に、早くしなさいと言わんばかりに、志津は鋭い眼光で見遣った。
赤羽は、期待するような目で千早を見つめている。
ええい。どうにでもなれっ!
千早は、戸惑いながらも右手を赤羽の目の前に突き出した。
赤羽は両手で恭 しくその手を捧げ持つと、自分の眉間に押し当て何か呟いた。
その途端に、二人は赤い炎に包まれた。
声すらも出ない。
焼け死ぬ!?
いや…熱くない。それどころか柔らかくて暖かな炎は心地良くて、この感覚は何処かで触れたことがある気がした。
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