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見えないはずのモノ(5)
あれ程燃え盛っていた赤い炎は次第に小さくなり、やがて何事もなかったかのように、ふっ、と消えた。
赤羽は千早の手を握ったまま、感無量といった感じで千早を熱く見つめるばかり。
千早もその手を振り解くこともなく、どことなく懐かしく感じるその目を見つめ返していた。
突然、赤羽が手を離したと思うと、後ろに飛び下がり、またひれ伏した。
尻尾がくるりと丸まっている。
「もっ、申し訳ございませんっ!
千早様のお手を…失礼いたしましたっ!」
その素早さに目をぱちぱちとさせながら
「だから…その“千早様”っていうの止めてくれないかな…
おばあちゃん、笑ってないで説明してくれない?
俺、夢でも見てるの?」
その時何処からか、ごぼりごぼりという不思議な音が聞こえてきた。
「え?何の音?…庭?庭に何かいる!」
ごぼーーーっ!
一際大きな音と共に、庭に面した窓ガラスが真っ暗闇に包まれた。
もう、驚くどころではない。
今度は何だ?
ところが志津も赤羽も平然としている。
ということは…狙われているのではない。
窓ガラスにへばり付いた泥が、ぼとりぼとりと落ちていく。いつもピカピカに磨かれているガラスが、見るも無残に泥だらけになっていた。
志津の声が響き渡った。
「もう!誰がここを掃除すると思ってるの?」
土塊 の中から、小さな頭がひょこっと現れた。
「黄牛 っ!」
のそのそと這い出してきたのは、金髪で黄色い水干の男の子。
申し訳なさそうに上目遣いで、ちろんと志津を見つめている。
「…おばあちゃん…今度は、何?」
はあっ、とため息をついた志津は
「あれは土を操る“黄牛”。赤羽の覚醒につられて出てきちゃったのね。
…黄牛、こちらにいらっしゃい。」
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