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見えないはずのモノ(8)
ひとりで納得するように、ふんふんと頷いた志津は
「前の世で千早やこの子達を命懸けで助けて、深い傷を負って長い間眠りについておられるのよ。
夢に出て来られるなら…そろそろその傷も癒える頃なのかしら。
主様が千早を守れないその間は、この5人がずっと守ってくれていたのよ。」
千早は目の前の5人に視線をやった。
皆、一様に敬慕の表情で千早を見つめている。
「…そうなんだ…知らなくてごめん。
ずっと守ってくれてありがとう。」
無意識に放たれる感謝の念。
それを受けた5人の身体が輝きを増していく。
「え?何?何なの?」
戸惑う千早に、志津が
「千早の思いがこの子達の力になるのよ。
感謝、愛情、思慕、慈悲、慈愛…そういったプラスの感情は全て。
彼らは千早のことが昔から大好きで、いつもくっ付いていたから、主 様はよく焼きもちを焼いていたわね。」
「ねぇ、おばあちゃん…さっきから『主様、主様』って言ってるけど…俺、男なんだけど。
夢でも俺は男だったんだけど、俺の伴侶は男の人ってこと?」
ほほほっ、と笑い飛ばした志津は
「今更何を。あんなに熱烈に愛し合っていたのに。
千早を守るために、私がその記憶を全て消してしまったから…でも5人が揃ったし、もうすぐ主様も目覚めるだろうからきっとすぐに思い出すわ。」
瞬間、千早の脳裏に夢の一部が蘇った。
一糸纏わぬ姿で混じり合う彼と自分と。
その光景は、全くいやらしくなく、神々しくそして自然なものに思えた。
次に場面が変わり、命の火が消えそうな男性を必死で看病している自分が見えた。
俺が、愛したというひと…俺達を守り眠りについている彼は、今何処にいるのだろう。
『会いたい』
何故か胸がギュッと締め付けられ、泣きそうになった。
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