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見えないはずのモノ(9)
そうだ、肝心なこと聞かなきゃ。
「おばあちゃん、俺が『救い主』ってどういう意味?俺、おばあちゃんみたいな力は持ってないよ。
そんな俺を守るために記憶を消したのはどうして?
それと…その『主様』は何処にいるの?
俺には何もかもが非現実的で…あ、でもこの子達は今、存在しているから…それは信じるよ。」
最後の言葉に、赤羽達の顔がぱあっ、と綻んだ。
志津は愛おしげに千早を見つめた。
そして、大きなため息をついた。
「まず…『救い主』ね。
簡単に言うと、千早はこの世の鍵の役目なの。
邪悪な者達を封じ込める鍵。
その鍵がなければ、この世界は邪気に満ちた恐ろしい空間に成り下がってしまう。
だから、邪な考えを持つ者達が、その鍵の命を狙い亡き者にしようとする。
それらから千早を守るのがこの子達。
『主様』はこの子達を統べる核であり、千早の番。
大昔から千早に寄り添い守り、愛してきた方なのよ。
記憶と力を消したのは、前の戦いで主様が身体を失ってしまったから。」
「それって、俺達を守るために?」
「そう。千早の祈りで魂は消えなかった。
その代わり、身体が元通りになるまで長い長い年月が掛かる。
その間に千早が襲われたらこの世も終わり。
この子達も主様のお陰で命からがら逃げおおせたけれど、その力を取り戻すにはやはり随分と時間が掛かってしまったの。
邪悪な心に支配された者達も…主様がその身を呈して悪の根源を抹消したから、相当のダメージを負って壊滅状態で、そう簡単に手を出すこともできない。
『鍵』の気配を消せば、狙われることもない。
だから、過去世の記憶と力を全て封じたのよ。
主様は…何処か海の底で眠ってらっしゃるはずよ。
千早が何処にいても必ず見つけ出すわ。」
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