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見えないはずのモノ(10)
突然の出来事と告白に頭がついていかない。
まさか『TVの収録でーす!』なんて看板を持った人が飛び出してくるんじゃないか。
それくらい現実味のない荒唐無稽な話だった。
「あの…」
その場の空気を断ち切るように、黒泉がおずおずと声を掛けた。
「あの…我らも赤羽のように“儀式”をしていただきたいのです。」
「儀式?」
「はい!再び千早様の手足となり動くことのできる眷属としての儀式です。
お願い致します。」
小さな子供達(に見える)4人から縋るような瞳で見つめられ頭を下げられて、千早は断ることができなかった。
「…分かった…で?手を出せばいいのか?」
はいっ!
小躍りしそうな4人の喜びように戸惑いつつ、千早は黒泉の前に手を差し出すと、彼は赤羽と同じように恭しく両手で捧げ持ち、自らの額に押し当てた。
瞬間、今度は清らかな水に包まれた。勿論苦しくはない。
思わず目を瞑ったが、断片的に過去世の記憶が蘇ってくる。
仲睦まじく“主様”と思しき男性と寄り添う自分、その周りをくるくると嬉しそうに跳ねる5人の従者達…
猛り狂うおどろおどろしい妖獣と血みどろになって戦う自分達の姿…
戦いを終えて命が尽きようとする“主様”に必死で我が命のカケラを注ぎ込む、その何とも言えぬ焦燥感と絶望…
涙が頬を伝う。
少しずつ少しずつ記憶が戻りつつあった。
いつの間にか水は引き、待ち遠しく控える黄牛に手を差し伸べた。
黄牛の力は“土”。命を育む大地の温もりに包まれる。
次第にはっきりと戻ってくる記憶と漲る力。
千早は自らの宿命と使命を自覚しつつあった。
黄牛が下がると、白響が待ち兼ねたように飛んできた。
白響は“金”。ダイヤモンドのような煌めく美しい光に包まれる。
5人の従者達に対する思慕の思いが深まり強くなる。泣きたくなる程に。
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