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見えないはずのモノ(11)

ダイヤモンドのような形の小さな光の粒が、千早の身体に当たる度に弾け、優しい光を放つ。 千早はそれらを受け止めるように片手を上に向け受け止める。 その手の中に、光が集まり吸い込まれていった。 最後に待つのは緑春。千早は堂々と彼の前に手を差し出した。 感極まり、目を潤ませた緑春が額に手を押し当てると、緑も鮮やかな若葉や色とりどりの花々に包まれた。 その時、これまでぼんやりとした輪郭でしかなかった“主様”の姿形がはっきりと映し出された。 何かが弾けたように、千早の全ての記憶が蘇った。 幾年も恋焦がれ愛し合ってきたそのひとは、柔らかな微笑みを千早に向け、手を差し伸べてきた。 千早は迷わずその手を引き寄せ、逞しい胸に飛び込んだ。 「待たせたな。」 幻覚でも幻聴でもない。その温もりとその声は、はっきりと千早の身体に残った。 離れ難くて泣きながらその顔を見ようと目を開いた時には、既にその温もりはかき消されたようになくなり、元の志津の家の中で、きょろきょろと辺りを見回して探したけれど、もうその姿は何処にも見当たらなかった。 「…待ったよ…随分と長いこと待ったよ… 何処にいるの?まだ会えないの?」 急激に千早を襲った悲しみの感情は、彼を混乱させた。 脱力したようにその場に蹲ると、声を殺して泣き始めた。肩を震わせて嗚咽する姿に、赤羽達はどうすることもできず、ただ遠巻きに見守るだけだった。 やがて、あんなに陽が差していた外の様子が一変し、雨雲が立ち込めてきた。 「これは…」 志津が期待を込めた目で空を見上げる。 見る間に真っ黒い雲に覆い尽くされ、遠くから雷鳴が聞こえ始めた。

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