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“主様”復活(1)

時折ドオーンと雷を落としながら、稲光が次第にこちらに近付いてくる。 黒泉が、泣き続ける千早の側にやって来ると 「千早様!外をご覧下さいっ!早くっ!」 急き立てるように千早の手を引っ張り、泥に汚れた窓の側に連れて来た。 「…何?…あの雷は…まさか…本当に?」 ガラスにへばり付いて近付く閃光を見つめる。 それは意思を持つもののように、真っ直ぐにこちらに向かって来ていた。 胸が騒ぐ。ドキドキと高鳴る鼓動。 あれは、そう、確かに… ドォーーーンッ バリバリバリッ!!! 一際大きな音がして、一番大きな庭木に落雷した。 恐怖感は全くなかった。それどころか嬉しくて嬉しくて堪らなかった。 やがて、ぶすぶすと燻る大木の根本から、ゆらりと大きな影が立ち上がった。 千早はもう我慢できず、窓を開けて飛び出した。 「主様っ!!」 叫びながらその影に向かってダイブした。 ボールのように跳ねて飛び付いた千早の身体を難なく受け止めたその影は、しっかりと千早を抱きしめると、千早だけに聞こえるよう耳元でささやいた。 「千早、真名(まな)で呼んではくれぬのか?」 懐かしい匂い、恋い焦がれた声、熱い血潮が通う身体。 彼の言葉にすぐに答えることができず、千早は泣きじゃくり力一杯抱きついたまま離れることができなかった。 あれだけ荒れていた空に日差しが戻る頃、千早はようやくゆっくりと身体を離し、涙で瞳を潤ませながら目の前の男をまじまじと見つめた。 そしてほんのりと頬を染め、たおやかに笑うと耳元に唇を寄せてささやいた。 「お帰りなさい…(あかつき)様…」 破顔した男に唇を奪われ、千早は気が遠くなりそうだった。 待っていた。待ち望んでいた。長い時を待ち兼ねていた。

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