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2人の出会い(2)
祀られていた龍神は、よく天候の願いを叶えてくれた。
お陰でその村一帯は、洪水も干ばつもなく、農作物は山のように採れ、村人達は満ち足りた生活を送っていた。
ところが、人間というのは欲深いもので、満たされると『もっと、もっと』といういやらしい考えを起こすものである。
その村人達も御多分に漏れず、そういう輩が出てきた。
『お供物を増やせば、もっと収穫ができるはず』
『龍神は人を喰らうらしいぞ。』
『人身御供を差し出せば、今度は財宝が降ってくるやもしれぬ』
何処からかまことしやかに流布していた噂に乗せられて、残念なことにその先頭に立ったのが、冷静な判断を下すべき立場の、その村の長 であった。
村人のことは家族構成から付き合いの強弱まで全て把握している。
何処かの家の若い娘を生贄に差し出すのは、流石に長い付き合いの中では忍びなかった。
誰かを選んだ後、どんな批判を浴びるのか…それを考えただけで身震いする。
誰か、身寄りのない人間はいなかったか…
そこで思い出したのが、捨て子の千早だった。
元々、龍神を祀る神社の者だ。
『神さんの預かりもの』だと育ってきたから、その神さんにお返しするだけだ。
そうだ、それがいい。
男だけれど、身体も小さく女のようだ。
どうせ食われてしまうのならどちらでも良いではないか。
白無垢を着せてしまえば分からぬ。
『神さんのところへ行くんだぞ』
と言いくるめればいいだけだ。
神社には相応の金銭を渡せばいい。厄介者が居なくなって、神社も清々するはずだ。
何とも身勝手な思い込みと理由で、千早を生贄に出すことが決まってしまった。
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