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2人の出会い(5)

龍神様だ… 千早は未だかつて龍神を見たことがない。 白香も、宮司すらも。ましてや村人の誰もがその姿を見た者はいない。 感じるのは雷鳴と風雨、それに供物がかき消されたようになくなる、という事実のみ。 遠くに轟いていた雷鳴と稲光が、次第に近付いてくる。 ゴロゴロゴロ ドォーーン ピカッ ドドーーーン 流石に千早も恐ろしくなってきた。 まさかあの雷に打たれて黒焦げになったところを…嫌だ。そんな命の無くなり方は嫌だ。 千早はガタガタと震えながら、それでも気丈に光る稲妻を見つめていた。 段々と音も光も大きくなり、もうダメだと目を瞑って頭を抱えたその時… 一際大きな音と、瞼を閉じていても眩しいと感じる光に包まれた。 そして、穏やかな声が聞こえた。 「お前は誰だ?何故ここにいる? いつもの供物はどうしたのだ?」 恐る恐る顔を上げ目を開くと、そこには腰まで伸びた金色の髪の毛の、着物姿の美丈夫が立っていた。 目鼻立ちははっきりとしており、今までこんな美しい人にはお目にかかったことがなかった。 龍神様?こんなに美しいお方だったなんて。 声を出そうにも気だけが急いて、はくはくと息を吐くばかりで言葉にならない。 そんな千早の様子を見ていたその人は 「まさかとは思うが…お前は私に生贄として差し出されたのか?」 こくこくと頷くと、その人は大きなため息をついた。 「何故人間を供えるのだ?私はひとを食べない。 勘違いも甚だしいっ!」 苛立ちを含んだ声音に、千早は焦った。 龍神様を怒らせたら神社を村を守っていただけなくなる。 千早は必死だった。 やっとの思いで声を振り絞った。

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