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2人の出会い(7)

それに性根もいい。 今時珍しく、我が事よりも他人の事を思い遣る心を持っている。 欲深い村人のために、己の命すら差し出そうとする健気な心に、食指が動いた。 捧げられた者なら、もう私のものだ。何をしようと私の自由。それならば連れて帰り(つがい)にしよう。 本人も『帰れない』と申しておるし。 「千早…と申したな。」 「はっ、はいっ!」 「本当に帰らなくても良いのか?私にその一生を捧げるのか? …お前を心配する者達が待っているのではないのか?」 千早は、ふるふると首を振り 「すでに今生の別れをしてきております。 何卒龍神様のお望み通りに。」 「…そうか…ならば連れて行こう。 その代わり『今後一切生贄はいらぬ。今まで通りの守護はしてやるから、供物もいつも通りに。』と一筆残していけ。 村の者は、犠牲にしたお前のお陰で守られている、と代々罪悪感を背負って生きていけばいい。 それと…私のことは“(ぬし)”と呼べ。」 「主様…」 龍神の思わぬ申し出に、千早は驚きながらも平伏して受け入れた。 命を召し上げられない上に、村への守護も変わらず、おまけに主様の側で暮らしていける。 神様の側にいられるなんて。何だかワクワクしてきた。 促されるまま(ふみ)を書き上げると、そっと畳んで自分が座っていた場所に置き、風で飛ばないように石を添えた。 「人間とは誠に身勝手な生き物よのう。」 その声に顔を上げると、大きな金色の龍が空に浮かんでいた。 千早は初めて見る龍神の姿に、恐怖を通り越して美しいと思っていた。 畏怖と尊敬と憧憬の篭った目で見つめられ、龍神は困惑していた。 不思議な人間。私の姿を見ると、普通は正気を保ってなどいられないのに。 この者は普通ではない。何かが違う。 手の平に乗るようにそっと手を伸ばした。 千早は素直にその上に乗った。

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