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招かれざる者(1)

千早を思う白香の狂った親心を思う間もなく、千早は龍神との生活を始めた。 千早を怖がらせまいと思うのか、龍神は千早の前で極力人型で過ごしていた。 甘やかな匂いと優しい眼差し。 『千早』と胸が震えるような声で名を呼ばれる度に頬が赤く染まる。 オカシイ。 これはまるで『恋』と呼ばれている思いではないか。 俺は男で、“神さん”にこんな気持ちを抱くなど。 あぁ、違う。これは“憧れ”だ。 今まで見たことも触れたこともない、決して出会うことのなかった雲上の“神さん”に優しくしてもらっているから、何か勘違いしているだけなのだ。 はにかみながら微笑むかと思えば、落ち込んだ顔を見せる千早に、龍神はどう扱って良いやら戸惑っていた。 彼にとって、性別は関係ない。 自らが伴侶と決めれば、相手をそれに似合う身体に変えることができる。 ひと目見た時から、唯一の伴侶だと密かに悟っていた。 嫌われても連れ帰ろうと思い、そうした。 千早は自分のことを好いてくれていると思うのだが、思い込みなのだろうか? 自分は生涯無二の伴侶にするつもりで暮らしているのに、千早はどう思っているのだろうか。 龍神自身も自分の気持ちを持て余していた。 そんなある日、龍神はどうしても外せぬ所用で出掛けることになった。 彼が人間の伴侶と暮らしているのは、随分と噂になっていたようだった。 何かとちょっかいを出したがる同胞も多い。 自分の留守を狙って千早に何か仕掛けてきても困る。 「千早。」 「はいっ!」 「私は所用でどうしても出掛けねばならない。 誰か訪ねてきても、決してここには入れぬように。そしてこの生垣からは出ないと約束してくれるか?」 「はい、仰せの通りに。」 「念のために結界を張っていく。 この中にいれば安心だ。 もし、万が一の時は…これを壊せ。必ずお前を守る。」 そう言って首から掛けられたのは、透き通った美しいガラス玉の首飾りだった。 球体の薄いガラス玉は、中が空洞で虹色の輝きを放っていた。

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