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招かれざる者(2)

千早はその美しさに目を見張った。 「何て綺麗な…」 「よいか、どんなことがあっても肌身離さずつけておくこと。 そして何度も言うが、決して誰も入れてはならぬ。この生垣から決して出てはならぬ。 なるべく早く帰るから、大人しく待っていてくれ。」 「はい、お気を付けていってらっしゃいませ。」 龍神が何度も何度も同じことを念押しするので、ついに千早は笑い出してしまった。 「主様、私は子供ではないのですから、そんなに何度も仰らなくても…」 龍神は、むう、と膨れっ面をしたが、すぐに 「そなたが私との約束を(たが)わなければ良いだけのこと。 では、行ってくる。」 千早の返事を待たず、龍神は外に走り出て本来の姿に戻ると見る間に青空に消えていった。 ひとり取り残された千早は、ふと目に留まったガラス玉を太陽にかざした。 虹色に煌き反射するその美しさに暫し見惚れていたが、洗い物の続きを思い出し、台所へと向かった。 2人きりの家事はすぐに終わり、いつもなら何やかやと千早を構いたがる龍神の相手をすることもなく、時間を持て余した千早は縁側に腰掛けると、太陽の光に反射する美しい玉を再びうっとりと眺めていた。 その玉は、何故か龍神と同じ空気が流れていて、彼がいないのに側にいるような安心感があった。 「こんにちは。」 突然声を掛けられ、千早は飛び上がった。 こんなところに一体誰が。 きょろきょろと辺りを見回すと、ひとりの男が生垣の側に立っている。 髪は真っ黒で腰まで伸びており、口元に笑みをたたえてはいたが、その眼光の鋭さは尋常のものではなかった。 千早の脳裏に『何処かの龍神様だ』と、そして何故か『近付いてはいけない』と警告の言葉が浮かんだ。 だが神様なら無礼はできぬと無視できず、取り敢えず挨拶を返した。 「こんにちは。」

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