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過去世の恋(2)
主はひとりで何かを考えていたが、千早はその間もたった一つの問い掛けをするタイミングを伺って、うずうずしていた。
そして思い切って声を掛けた。
「…あの、主様…お尋ねしたいことが…」
「何だ?」
「主様も壱流という龍神も、私の事を『嫁』と仰いました。
…それは一体どういう意味なのでしょうか?」
真っ直ぐに主を見つめる千早に、目を逸らす事なく彼が答える。
「言葉通りだ。
…千早は私の嫁。伴侶。番。それ以外の何者でもない。
それが何か問題でもあるのか?」
「『問題』って…主様、私は男ですよ?人間ですよ?
それが主様の嫁だなんて…恐れ多いことですし、有り得ないです!」
「私がいいと言うのだからそれでいいんだ。性別などどうにでもなる。
私は千早がいい。千早しかいらぬ。
初めて会った時から、千早しか目に入らぬ。
花嫁衣装を着て私の元へ嫁いできたではないか。
千早は…嫌なのか?」
ふるふると首を横に振った千早は
「…嫌とか、そういうことではなく…その…」
「その、何だ?」
「あの…『嫁』というからには、その…私は、あの…主様と…その」
「心も身体も私のものになるということだ。
千早、全て私に委ねろ。」
主は、口籠る千早の言葉を遮った。
ぱぁっ、と千早の頬が朱に染まった。
火照る頬を両手で押さえた千早は、何とも愛らしく、主は千早を抱きしめたまま、顎を持ち上げ口付けた。
「んっ、んふっ…んむっ」
この年になるまで、神社で育てられた千早には、そういった経験などなかった。
息が止まる。このまま生き絶えてしまう!?
そう思った時、唇が離れた。
はぁはぁと息を荒げ、むせながら空気を吸い込む千早に、主は楽しそうに告げた。
「鼻で息をするのだ。さぁ、もう一度。」
さっきより強く唇が押し当てられる。
唇の間を捻じ込むように何かが入ってきた。
千早は軽いパニックを起こしていた。
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