32 / 58

過去世の恋(3)

頭が真っ白で目の前がチカチカする。 息苦しくなり、言われた通りに慌てて鼻で呼吸すると、喉奥で主が笑った。 初々しい千早の様子をこの上なく好ましく感じた彼は、舌を無理矢理捻じ込むと、千早の口内をなおも執拗に楽しむように嬲っている。 ついに千早は甘い声を上げ始めた。 「ん…んっ、むぐっ…ん…んふっ」 かわいらしい喘ぎ声に、主はますますその舌の動きを加速させた。 そして、千早の着衣のたもとから手を差し入れると、容易く胸の粒を見つけ出して軽く摘み捻った。 「ふむっ!?」 いきなり触られた驚きと、それ以上にそこから全身に流れた甘美な痺れに、千早は目を大きく見開き硬直した。 「ふふっ…いい感度をしているな…流石我が嫁。 感じるのはここか?それともこっちか?」 主はうれしそうに呟くと、左の粒、右の粒、と指先を交互にくにくにと動かしている。 「あっ、そんな…どうか、どうか…お止め下さいっ!」 千早の哀願も虚しく、飾りのような胸の粒は、つん、と立ち上がって主の指の間で転がっている。 じわりと熱が溜まり始めた下半身は、千早の下履の中で窮屈そうに容積をしめてきた。 主は、布越しに当たる千早自身に気付くと 「(くつろ)がせてやる。こちらに…」 と、軽々と千早を抱き上げると、いつも2人が休む寝屋へと運んで行った。そしてそっとその身を横たえた。 どうしてよいやら分からず、身体を縮こまらせ目を泳がす千早の髪の毛を撫で付け、優しい声で語り掛けた。 「私の真名(まな)は『(あかつき)』だ。二人きりの時はこの名を呼べ。」 「…暁、様…」 「そうだ。真名…“本当の名前”をお前だけに教えたのだ。他の誰にも教えてはならない。 伴侶のお前だけが知る名前だ。 よいな?」

ともだちにシェアしよう!