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過去世の恋(9)

「千早。」 震える千早の全身を優しい声音と温かな肌が覆った。 驚いてそっと目を開くと、満面の笑みの暁が千早を抱きしめていた。 大粒の涙を溢し続ける目元を舐め上げた暁は 「何を謝る?これを見るが良い。」 差し出された指には、千早の噛んだ傷など跡形もなく消えていた。 目を見張る千早にそっと口付けると 「千早、お前は交わりながら私の血を飲んだ。 もうこれで正式な私の伴侶だ。 私を求めよ。私を愛せ。 その命、魂、永遠に私に預けよ。」 恐怖で冷え切った千早の身体を包み込むようにかき(いだ)き、再び暁の愛撫が始まった。 暁は千早を優しく攻め立てる。 初めての快楽を番に施すことができるとは、何と嬉しくもあり、何と心躍るものなのか。 それはそれは執拗で愛情のこもったものであり、千早は息も絶え絶えになりながらも健気にそれを受け入れていた。 ぶちゅぬちゅといやらしい音を立てる後孔からは愛液がしとどに溢れ、千早はまるで自分が女になったような感じがしていた。 心なしか身体の奥に、何か別の場所ができつつあるような気すらしている。 『性別などどうにでもなる』とも仰っていた。 ならば自分の身体が変わっているということなのか。 不思議と恐怖を感じず、寧ろ嬉しくて仕方がなかった。 「ふっ…くっ…」 それでもなお声を出すのを躊躇う千早に 「それ、思うがままに声を出せ。 その方が私も嬉しい。」 暁様が『嬉しい』? 千早の胸の中がほわりと温かくなった。 一際強く突き上げられ思わず 「あああっ」 と甘い声を上げた千早に 「ふっ…何とも色っぽい声を出すな、私の嫁は…」 更に激しさを増す抽挿に、千早はもう抗うことなく、感じるままに甘い声を上げ始めた。

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