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戦いの記憶(5)
そこへ赤髪の男が両手を振りかざし、渾身の力を込めて振り下ろすと、物凄い炎が黒龍の身体を包み、焼き尽くしていく。
ギャアーーーーーー!!!!!
凄まじい断末魔の叫びと、ぶすぶすと生肉が焦げる臭いが辺り一面に漂い、黒龍は一直線に地上へ落ちていった。
人型に戻った暁は千早の肩を借り、身体を引き摺りながら黒龍が落ちた辺りへと向かった。
黒焦げの黒龍は身体を半分失い、ぴくりとも動かない。
まだ命があると分かるのは、微かに腹が上下するその動きがあるからである。それでもはらわたが流れ出て、その命の灯火 はまさに消えんとしていた。
その回りをあの5人が取り囲み見張っている。
暁は動かぬ黒龍に、静かに語りかけた。
「お前達の愚かな考えのせいで、何千何万何億という尊い命が失われた。
他者を傷付け、己 も傷付き。
その責めをどう償うつもりか。」
黒龍は暁の問い掛けに、ゆっくりとその閉じた目を開いて、暁と千早を見つめた。
千早は、その瞳をどこかで見たような懐かしい思いがして、視線をそらすことができずに見つめていた。
「償う?そのような考えは毛頭ない。
必ず、必ずこの無念は晴らしてみせる。
我らのような思いを持つ者は、決して滅びることはない。」
「…改心すれば情けを掛けようと思っていたのだが…仕方があるまい…」
「暁様っ!」
「千早、どうした?」
「命を…この黒龍の命を…どうぞお情けを!」
「何故だ?この者はこの世を破滅に導こうとしたんだぞ?
今も申しておっただろう。滅せねばまた同じことを繰り返す。」
「でも…」
「このまま捨ておいても、長くは持つまい。
しかし、その邪 な性根は、二度と蘇らぬように叩き潰さねばならぬ。」
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