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戦いの記憶(8)

千早の口から謝罪の言葉が零れ落ちる。 「…ごめんなさい…私を拾ってしまったばかりに…ごめんなさい…」 そう言うと、千早は黒龍の首に縋り付いて大声で泣き始めた。 私なんて、私なんて、この世に生まれてこなければ良かった。 そうすればみんなが傷つくこともなかったのに。 ごめんなさい。 私が、私がこの世に存在してしまったばかりに… 私のために命を失った者たち…ごめんなさい… 「千早…」 最早、黒龍は吐息混じりの弱々しい声しか出なくなっている。 「お前を拾ったことで、私の人生はとても色鮮やかで活気あるものになった。 礼を言う。本当にありがとう。 私は道を間違えてしまったが、お前はどうかそこの龍神と真っ直ぐに歩んでほしい。 だから…二度とこのようなことがないように、私が白香であるうちに、お前の手でこの戦を終わらせて欲しい。 千早、私の言うことが分かるな?」 一気にそう言いつけると、黒龍はまたごぼりと血を吐いた。 「千早。」 その声に促されるように顔を上げ、再び黒龍の瞳を見つめた千早は、もう泣いてはいなかった。 「…白香様…いえ、父上様… 千早は、千早はこのご恩を一生忘れませんっ! どうか、どうか来世は清らかな魂の白香様に戻られますように…」 黒龍が頷くのを確認した千早が、祈るように両手を合わせると、五気が5つの光となりその中に吸い込まれていった。 そして次の瞬間、千早と黒龍が眩しい光に包まれた。 あまりの眩しさに、その場にいた者達は目を開けて立っていることができずに倒れ込んだ。 ただ一人を除いては。 暁は満身創痍の身体を引き摺るようにして、光の渦の中の千早達に近付くと、後ろから千早を抱え込みその両手に自分の手を重ねた。

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