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戦いの記憶(9)

一層輝きを増した暁と千早から放たれる光のシャワーは、黒龍を包み込み、次第にそのおぞましい姿が消えていく。 黒龍の肉体が浄化され、黒色から白色へと変化して氷の粒のようにキラキラと輝きながら、空へ舞い上がるのが遠目からでも分かった。 命ある者は皆、固唾を飲んで見守っていた。 最後に残ったのは、丸いガラスのような美しい玉だった。 ただ残念なことに、表面のひび割れた部分から中心に向かって、一筋の真っ黒い筋が走っていた。 言葉を交わさなくても、暁と千早には、それが何であるのか、何をしなければならないのか、理解し合っていた。 千早は、あの黒い筋がある以上、もう二度と白香が白香として生まれ変われないことを悟った。 そしてこれからも、この世を滅ぼそうとする者達との戦いは続くであろうことも。 白香が望まずとも、この世にはびこる恨みや妬み、不満や怒りといったマイナスの感情は、やがて集まり大きな邪悪なものとなり、再び戦いが起こるはず。 その悪を生み出す根源となるのが、白香のこの黒い筋だということも… だからこそ、本来の白香は自らの魂の消滅を望んだのだ。 しかし、千早ひとりの力では、この魂を消滅させることはできなかった。 そこには暁の力が必要だったのだが、瀕死の状態の彼には、封印する力を千早に与えることだけで精一杯だった。 2人は何か呪文のようなものを唱えながら、大地に手を置いた。 すると、丁度その玉が入るくらいの穴が空き、見る間に玉が吸い込まれていった。 千早は誰に教えられた訳でもないが、自然と口をついて出てくる、鎮魂と封印と、様々な思いを込めた言霊を呟きながら、もう二度と会うことのないであろう育ての親に願いを込めて別れを告げた。 (どうか、安らかにお鎮まり下さい…)

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