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戦いの記憶(10)
予想した通り、その後も禍々しい者達との戦いは幾度となく起こった。
その度に、二人は志を同じくする者達と命の危険を顧みずボロボロになりながらも制圧し、この世を守ってきた。
彼らは何度も転生し巡り合い愛し合い戦い、大切なものを守り続けてきた。
最後の戦いは壮絶だった。
二度と思い出したくもない。これこそ記憶を永遠に封じ込めたい、口にするのもおぞましい戦いだった。
大死闘の結果、暁が自らを犠牲にして千早達を守り抜いたのだ。
千早は全身全霊を掛け、その魂を引き戻し命のかけらを与え、何とか暁の魂はこの世に留まった。ただ、失った身体が元通りになるには、気が遠くなるくらいの時間が掛かったのだ。
悪の根源となっていた白香の悪しき魂は、その尊い犠牲のお陰で、完全に消滅した。
薄れゆく意識の中、暁の魂を抱きしめ、黒焦げの大地に倒れ込んだ千早の目に映ったのは、微笑みながら天に登っていく、あの優しい白香の姿だった。
白香様…父上様…良かった…
千早の流した涙が大地に触れた瞬間、草木が生え清水が湧き、太陽が照り始めた。
その時、千早の身の回りの世話をしていたのが志津である。
暁によって命を救われた五気達が散り散りになって何処に行ってしまったのか分からぬ今、身体を失った暁が千早を守る術はない。
『千早がこの世の鍵だと悟られなければ、命を狙われることもあるまい。
私が再び身体を取り戻すまで、千早が見つからぬように、その記憶と力に封をしてくれ』
との暁の指示で、彼女は意識を失った千早の記憶と力に蓋をした。
龍神の血統の彼女もまた、不思議な力をもっていたのだ。
記憶を失えば、最愛の伴侶のことすら忘れてしまう。
『それでもいい』と寂しげに暁は言った。
志津は、それから千早が生まれ変わる度に、ある時は親子、ある時は兄弟、またある時は親友、といつも身近にいて千早を見守ってきた。
暁の復活と五気の生存を信じて。
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