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後日談(1)

季節は、晩春。 例年よりひと月以上も遅い満開の桜から、ちらちらと花びらが舞い落ち、歩道に落ちたそれらを風がまた舞い上げる。 「まるでピンクの雨みたいだ…」 ひとり言を呟く千早は仕事を終え、帰り道を急いでいた。 配属されたのは一応『住民課』。 そう多くはない田舎の役所仕事は、定時を待たずして全て終わってしまう。 その空いた時間で、若い千早はあちこちから手助けを請われ、それを請負いこなしていた。 今日もまた気を張り続けた一日を終え、やっと家に辿り着いた。 「ただいまー!」 家の中はしんとしている。 迎えてくれるはずの志津はおろか、五気や一番会いたい伴侶の姿すらない。 「何処に行ったんだろう…」 訝しげに思いながら名前を呼びつつ部屋の奥へと急ぐ。 「主様ぁー!おばあちゃーん! 赤羽!白響!緑春!黄牛!黒泉! みんな、何処?何処にいるの?」 庭の方から何やら賑やかな声が聞こえてきた。 「千早!」 千早の姿をいち早く見つけた暁が手招きする。 満開の桜の木の下でお重を広げ、何やら宴会ムードだ。 「主様、これは?」 「志津殿が“お祝いだ”とご馳走様を(こしら)えてくれたのだよ。 今日も大儀であったな。さ、早くこちらに。」 お祝い?何の?誰かの誕生日か何か? 頭を捻りながらも、促されるまま暁の膝の上に座らされた。 「千早、何か私に報告することはないのか?」 はて、暁様に報告すること?何だろう… 首を傾げて 「何のことでしょう…皆目見当もつきませんが。」 と答えると 「ワザと焦らしておるのか?それとも気付いておらぬのか?」 と言う。 ますます訳が分からない。 困り果てて 「全く分かりません。隠し事などありませんし。」 と返した。 目の前の志津はにこにこと微笑んでいる。

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