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後日談(3)
暁に背中からすっぽりと包まれ抱かれた千早は、何とも不思議な光景を眺めていた。
それらの放つ光や色は、どこまでも澄んで優しかった。
「みんなありがとう。これからもよろしくね。」
嬉しさのあまりころころと庭中を転げ回る五気に、千早が微笑みながら告げると、彼らは顔を見合わせて頷いた。
赤羽が遠慮がちに寄ってきた。
「千早様、お子はいつ生まれるのですか?」
さて、人の子なら十月十日 、けれどもこの子は暁様の血を引く子…千早は、うーん…と考え込んでしまった。
すると主が何でもなさそうに答えた。
「恐らくあと十日前後であろうな。」
「ええっ!?そんなに早く!?」
「もっと早くなるやも知れぬが…志津殿、どう思われる?」
「主様の仰る通りですわ。早くて1週間、遅くとも十日…さあ、忙しくなるわよ!」
「ちょっと待って!仕事は?みんなに何て言えば」
「案ずるな。千早の上司は誰だ?」
「…流 一也 部長だけど…」
「名前と名字をひっくり返して?」
「一也 流…かずや ながれ…かずや ながれる…いちや ながれる…いち りゅう…いち る…
え!?まさか!…そんなこと…ええっ!?」
「ははっ、そのまさかだ。
千早の上司は、あの壱流だよ。」
壱流様…初対面は最悪だったが、幾度もの戦いの中、常に暁様の味方になり、心許せる仲間となった龍神…
「何で?どうして?何で人間に?」
「愛した伴侶が千早と同じく人間でな。
やはり相手が転生を繰り返しては、その度に添い遂げている。
今世では人間生活を満喫したいらしくてな、そのような形 になったのだよ。
奴には、それとなく話をしている。
上手いことやってくれるから明日にでも相談すると良い。」
嘘みたい…部長が壱流様だなんて…
だからあの瞳は何処かで見た気がしてたんだ…
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