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第2話

「随分大きいな。」 渉はあたりを見渡しながら驚嘆の声を上げた。 ここは海の近くにあるショッピングモール。つい2ヶ月前にオープンしたばかりで、平日にも関わらず人が多い。渉と啓太の住む部屋から車で1時間程走らせたところにある。朝起きてから啓太が誕生日に一番したいと希望したため、2人はここに居る。 「ずっと気になってたけど、家から遠いから1人だと行く気になれなくて。兄さんと来れて嬉しい。」 啓太は渉に笑顔を向けてそう言った。つられて渉も微笑む。 2人の身長はさほど変わらないため、お互いに顔を向ければ見上げることも見下げることもなく視線が合う。どちらかともなく、ショッピングモールの奥へと歩を進め始めた。 「それにしても、ショッピングモールが建っていただなんて知らなかった。・・・仕事で忙しかったから全く見向きもしなかったせいかな。」 自身の仕事の忙殺ぶりを振り返って、渉は自嘲気味に言った。その点に関しては、そうだよ、と啓太も同意する。 渉は証券会社の営業として働いており、朝早くから夜遅くまで働いている。啓太は渉の身体を心配していたものの、いつも真面目に働き続けていた。 「この1週間は仕事のことは忘れて楽しもうよ!・・・あっ、俺、服見に行きたい。」 完全に社畜と化していた渉の気を逸らそうと、啓太は近くの服屋を指さして言った。まだ大学生である啓太には、社会人の忙しさや苦労はわからない。けれど、休みの時くらいは仕事のことを忘れてもバチは当たらない。そんな無邪気な啓太を見た渉は、そうだな、と言って、彼のあとを付いて行った。 ◇◇◇ 「あー楽しかった!」 啓太は部屋に着くなりそう言いながらソファーに転がった。その前に両手いっぱいに持っていた日用品や渉に買ってもらった誕生日プレゼントを脇に置いて。 昼前にショッピングモールに行ったが、部屋に帰って来た時には空はすっかり暗くなっていた。ウィンドウショッピングや食料調達、啓太の希望でゲームセンターで遊んだり、渉の希望で映画を一緒に観たり・・・。約半日で充実した時間を過ごしていた。 「何だかまだ元気そうだな、啓太。俺はちょっと疲れた・・・。」 「兄さん、老け込むにはまだ早いよ。」 渉はテーブルに食料品を乗せ、首を回してそう言った。啓太はソファーに寝転がったまま渉に向かって軽口を叩く。10歳も年が離れていると、渉の発言が時折おっさん臭いと啓太は感じていた。 「じゃあ、啓太も今日を以て成人したことだし。・・・一緒にお酒を飲むか。」 そう言って渉は細長い紙袋からワインを取り出した。啓太に気付かれないようにこっそり買っておいたものだ。啓太は目を輝かせて勢いよく起き上がると、うん、と大きく首を縦に振った。 買ったものを片付けたテーブルには、ワインとワイングラスが2つ 透明なグラスが、褐色を帯びた紫色に染まる 2人はステムを持ち、顔の近くまで上げる 「改めて。20歳の誕生日おめでとう、啓太」 「・・・ありがとう、兄さん。」 2人の短いやり取りの後、ボウルを優しく当て合った。 キン、と甲高い音が静かに響いた。 初めて飲んだワインは、濃厚な果実の味がした

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