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第4話
「兄さんの休みも今日が最後かー・・・。」
七度目の朝。啓太は渉が作った朝食を食べながら、寂しそうに呟いた。
楽しい時間ほど、あっという間に終わってしまう。啓太には大学の夏休みがまだ少し残っているものの、渉は今日が終われば当分休みはなさそうだ。
「俺も休みが終わるのは寂しいな。・・・啓太ともっとゆっくり過ごしたい。」
渉の言葉に驚いて、啓太は喉を詰まらせた。急いで牛乳を飲んで何とか事なきを得る。渉の突然の口説き文句は心臓に悪い。啓太は内心そう思いながらも、同時に喜んでいる自分も居る。照れた顔を隠そうと、啓太は残っていた朝食を完食した。
―今日の兄さんは、何だか、エロい・・・。
啓太はそう思いながら、一糸纏わぬ姿でベッドに横たわっている。
朝食を摂った後、家事を終えた渉が性急に身体を求めてきたからだ。肌をまさぐられ、服を一気に脱がされ、そうして啓太の中へと入って行った。
まるで発情したかのように、何度も何度も最奥を突かれて啓太は喘がされた。求められることは素直に嬉しいが、身体は気持ちについて行かなかった。
「ゴメン、啓太。がっつきすぎた・・・。」
「別にいいよ。求められるの嬉しいから。」
申し訳なさそうに、渉は啓太に言った。しかし、満身創痍な啓太の表情は嬉しそうだった。腰に違和感はあるものの、それが渉の、啓太に対する愛であると思えたから。けれど、行為を受け入れる側は負担も大きく、啓太は強烈な睡魔に導かれるまま瞳を閉じた。
◇◇◇
「・・・あれ、今、何時?」
啓太が目を覚ました時には、空は夕焼けに染まっていた。隣に寝ていた筈の兄の姿が無かった。上体を起こして散らばった洋服を手に取って再び身に纏う。裸足のまま部屋を歩いていたら、目的の人物はキッチンに立っていた。
「よく眠ってたみたいだな。・・・ご飯にしよう。今日は啓太の好物を用意したから。」
渉がそう言うように、テーブルには啓太の好きな唐揚げやハンバーグが乗っていた。途端に啓太は目を輝かせ、やったー、とまるで子供のように喜んだ。彼は渉が作る唐揚げとハンバーグがとても好きで、総菜やファミレスで決して食べない2品だ。
「早く食べよう、兄さん!」
「そうだな。・・・では。」
啓太は足早に椅子に座る。続いて渉もキッチンから出て弟の向かいに座った。
2人は手を合わせ、同時に口を開いた。
「「いただきます」」
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