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第5話
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ようやくランドセルよりも体の方がしっかりしてきた頃だった。
歩く度に、教科書やノート、筆箱が鞄の中で擦れてガチャガチャとうるさい。
けれど、それよりも、耳障りな音が周囲に蔓延していた。
ぺちゃくちゃと話す声。
好奇の目で、自分たちを見てくる視線。
子ども心に、それは心地のよいものではないのだと分かった。
「 ――― と出て行っちゃったんですって」
「やぁだ、ほんと?かわいそうね」
家に帰ると、母が蹲って泣いていた。
慰めなきゃと思ったが、ふとガランとした家の中に不安を感じて、悠亜はキョロキョロと周りを見渡す。
いつもなら真っ先に母を慰めてくれるのに。
自分が不安な時、必ず抱き締めてくれるのに。
「お母さん、 ――― は、どこ?」
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