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第7話
気分転換はうまくいき、図書館で勉強しているといつの間にか6時のチャイムが鳴っていた。
少し上についている窓の外を見ると日差しも弱まり、外を歩くにはちょうどいい感じだ。
悠亜はトートバックへ、持参した参考書と筆記用具を片して帰路に立った。
夕飯時で、商店街は美味しそうな匂いに満ちていた。悠亜の腹もグゥっと鳴って、空腹を知らせてくる。
なにか食べて帰ろうかとスマフォの時間を確認すると、もしかしたら亜南がバイトから帰ってくる時間と被るかもしれないと思い至り、外食は止めにした。
その代わり、よく寄る店で惣菜を買っていこうと、悠亜が道を曲がった時だった。
ここ最近、まともに見ていない亜南の姿を見つけた。バイトはとっくに終わっていたのかと思い、外食に切り替えようとしたところ、ふと隣にいる男が目に入った。
以前も見かけた中年の男だった。
(…また?)
疑問と同時に不安に駆られる。しかし、今は亜南と顔を合わせる方が気まずい。
気にはなるがそのまま立ち去ろうとした瞬間、中年の男が振り返った。
その顔を見て悠亜は目を見開き、スマフォを手から落とした。 スマフォの端に傷が入る。
「 … っ、 … な、んで … 」
声が自然と震えた。
黒髪とのコントラストを強調させるように、顔面は蒼白になる。
弟の隣にいる男の正体を、悠亜はよく知っていた。
驚愕と疑問と、怒りと。
色んな感情が襲ってきて、悠亜は立ち尽くした。
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