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第9話

「悠亜だって、同じじゃん」 注がれた言葉に、興奮した頭が冷める。 いつの間にか下がっていた顔を上げると、亜南の真剣な目と視線が合った。 「悠亜、俺にもおばさんにも内緒で大学受験やめて、家出てくつもりでしょ?俺のこと好きなんじゃないの?それなのに、俺から離れるの?離れて、他の人と一緒になるの?俺のこと、好きなのに?」 「ちがう・・・」 畳みかけられる現実に、悠亜は頭を緩く振る。 けれど、亜南は止めなかった。 「好きな人がいるのに、他の人と一緒になって・・・、そんなのお父さんと一緒じゃないか」 「・・・違うっ」 「違わない」 ハッキリとした声音が、悠亜の言葉を否定する。先程まで怒鳴っていたのが嘘のように、悠亜はただ亜南の言葉に怯えた。 「ねぇ、俺、お父さんと話して分かったんだ。好きな人とは絶対一緒にいなきゃダメなんだよ。男同士も、兄弟も関係ない。好きな人と離れて、他の人と一緒になるなんて・・・そんな嘘つくから、皆、不幸になっちゃうんだ」 既に力が抜けて、ただ服を掴んでいるような腕を、亜南が掴んだ。 そのまま、抱きしめられる。 「悠亜。俺、ほんとに悠亜のこと、好きだよ。だから、一緒に居ようよ」 突き放したい。 逃げ出したい。 けれど、体は正直で、ふわりと香る亜南の匂いに反応を示す。 絶望と、歓喜と――――。 バラバラな気持ちが綯い交ぜになって、悠亜の心を痛めつける。 「ずっと一緒に居て・・・。・・・俺を、置いてかないでよ。悠亜・・・」 「・・・、・・・」 縋り付くように、背中を掻き抱かれた。 まだ自分より細い腕は、拒絶すれば剥がすことができる。 けれど、悠亜は動かなかった。 拒絶することも、受け入れることもできずに。 ただ、動けなかった。

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