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第11話

頬に何かが触れる感覚に、悠亜は目を覚ました。 ベッドを背もたれにして床に座りながらテレビを見ているうちに、居眠りをしてしまったらしい。 目の前のテレビ画面がいつの間にか録画一覧に変わっており、日もすっかり落ちて夜になっていた。 あくびをしながら目を擦っていると、頬からひらりと何かが落ちた。 ズボンの上に落ちたそれを掴むと、桜の花びらであることに気づいた。 開け放された窓の外から風に乗って部屋に入ったらしい。 引っ越してきたばかりで分からないが、近くに桜の木があったように思い至った。 4月になって、悠亜は無事、国家公務員の事務となった。 勤務地は家から通うこともできる距離だったが、当初の予定どおり一人暮らしをすることにした。 始まったばかりで覚えることも多く、1ヶ月も経っていないのに休みの日はぐったりと疲れていた。 カレンダーを見て、明日も休めることを確認すると、このままベッドに入って寝ようかと立ち上がろうとした瞬間、玄関の鍵が開く音がした。 扉が開くと同時に、「悠亜!」と名前を呼ばれる。 亜南だった。 バタバタと部屋に入って、悠亜に抱きついた。 「悠亜、たこ焼き買ってきたよ。どうせ、まだ夕飯食ってないんでしょ?」 「どうせってなんだよ」 「食べてんの?」 「・・・食べてない」 「ほら、食ってないんじゃん」 楽しそうに笑ってローテーブルの上に二人分のたこ焼きを、亜南が置いていく。その顔が、夢の中の顔とそっくりで、悠亜は亜南の顔を見つめる。 それに気づいて亜南が不思議そうに首を傾げた後、「悠亜」と呼んでキスをしてきた。 触れるだけのキス。 すぐに離れて、亜南が再び笑みを向ける。 「悠亜、好きだよ」 ああ、これも夢と同じだ。 「・・・」 けど、悠亜は答えず、ただ微笑を浮かべ頷くだけだ。

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