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第2話 お前は別に悪くない

 日曜の夜。時刻は23時。  網野が友人と遊ぶ約束があるからと、会えなかった週末。  俺は、電話帳から網野のプロフィールを表示し、暫し眺めていた。  明日も仕事があるし、そろそろ帰ってきているだろうか?  こんな時間に電話を掛けるのは、迷惑だろうか…?  ……声、聴きてぇなぁ。  うだうだうじうじと考えていた頭に、ぼんやりと浮かんだ乙女な欲求に、ふっと鼻で笑う。  思春期の中学生かよっ。  自分の乙女思考に飽きれ、1人ツッコミをかまし、鼻で笑う。  その反動に、通話ボタンの上をゆらゆらと揺らいでいた指が、無意識のうちに落ちていた。  ぅおっ?!!  慌て耳にスマートフォンを当てる。  数度の呼び出し音のあと、ぷっと通話が繋がる音がする。 「はい」  元気な網野の声に、胸がむず痒い。 「あ、悪い。寝てたか?」  平静を装い放つ言葉は、どこか上擦る。 「起きてましたよ」  微かに聞こえる雑音は、外の雑踏ではないように思えた。  家に帰り着いたと推測した俺は、形ばかりのお伺いを口にする。 「いま、大丈夫か?」 「あ、えっと……」  周りを気にするように言い淀む網野に、直ぐに了承が返ってくると思っていた俺は、反応できない。  キキュッと音をが立ち、電話口に風の音が混じり込んできた。  ベランダへと出たのであろうコトが、推測できた。 「すいません。俺の家で飲もうって話になって、……」  何を謝っているんだか。  別に、お前は悪くないだろ。

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