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第4話 そっちの方がアウトだろ
「なになに? 彼女ぉ~?」
続く女の子の声に、俺の胸は、ミシミシと軋むような音を立てていた。
「違ぇよっ。会社の先ぱ……」
「どうもぉ。友人代表、森野れすっ」
苛立ったように放たれる網野の声に、心にぴしりと、ひびが走る。
網野の声に被るように、別の男の声が混じった。
酔っぱらい独特の舌っ足らず感と、敬礼でもしてきそうな勢いの男。
男の存在に、女の子と2人きりで飲んでいたわけではないコトへの安堵は生まれた。
でも、俺の心は、しゃしゃり出てきた男を、どうでもいいものとして扱った。
間髪入れずに“違う”と、放たれた否定の言葉が、胸の中に影を落としていた。
“彼女”じゃないにしても、少しばかりの動揺を見せてもいいんじゃねぇの?
俺たちは恋人……、なんだよな?
考えれば考えるほど、思考がその場で足踏みをする。
「育をよろしくお願いしますっ。何卒、なにとぞぉ……って、こら!育っ」
やけに上機嫌で割り込んできた男の声色が、激変した。
ガザっと響いた鈍い音に、スマートフォンが放られたらしいことを感じ取る。
「萌のおっぱい、揉んでんじゃねぇよっ」
ぱしっと肌のぶつかるような破裂音。
あまりにもはっきりと響く音は、スピーカー機能が働いているせいかもしれない。
「違ぇよっ。これは、萌が…ぁ……っ」
遠くから聞こえる言い訳がましい網野の声に、鼻から抜けるような悩ましい音が、続いた。
「触って欲しそうな顔でもしてたってか?」
怒り爆発の男の声に、電話先の現状が読み解けない。
なんだ? 何が起きてんだ?
揉んでるってなんだよ……?
「んなっ………ぁっ…」
喘ぐ……そんな表現が似合う網野の声。
悶えてるとしか思えない音。
こういうコトするのは、俺だけだと、キスをしてきたクセに。
キスよりも、おっぱいを揉む方がアウトだろっ。
なんだよ、その声はっっ。
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