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第6話 選択を誤った < Side網野
鞍崎さんからの思いがけない電話に、気持ちが昂った。
喜びそのままに、電話に出たオレに、鞍崎さんの穏やかな声が響く。
鞍崎さんに出会って、追いかけ、今の会社の入社試験を受けた。
この会社に就職できなかったら、縁がなかったのだと諦めようと思っていた。
でも、運命に後押しされ、同じ職場で働けるコトとなったオレは、とうとう鞍崎さんを物にした。
寝ていたかと心配されたが、寝られる状況ではなかった。
居酒屋から駅へと向かう最中、恋人が出来たと口を滑らせたオレに、森野 と萌 が食いつき、オレの家での宅飲みが決まった。
森野と萌は、高校を卒業するまでそんな素振りは全く無かったにも関わらず、何がきっかけなのか、1年程前から付き合い始めたバカップルだ。
高校からの友人である森野や萌が知っているのは、一晩限りの相手と適当に遊び、1人には執着しなかった軽薄なオレ。
そんなオレが、1人の人と真面目に恋愛をしようとしているのが、面白いらしい……。
面白がられても、仕方無い、…気もしなくもない。
一夜限りの軽薄な関係しか結んでこなかったオレは、改めて付き合うとなり、どうしていいのか迷子状態なのだ。
丁度いいから、こいつらに色々と聞いてやろうと、…根掘り葉掘り聞かれたら、お前らはどうなんだと返り討ちにしてやろうと企んでいた。
家に着き、缶ビールやらチューハイ、おつまみ類をテーブルへと広げている際に、鞍崎さんからの電話がかかってきた。
「いま、大丈夫か?」
ちらりと向けた視線に、森野も萌もまだ酒やつまみを広げるコトに夢中で、こちらに意識はない。
「あ、えっと……」
こいつらの目の前で電話をすれば、ニタニタしながら揶揄われるのがオチだ。
オレは、そっとベランダへと続く窓を開けた。
ベランダへと歩を進めながら、口を開いた。
「すいません。俺の家で飲もうって話になって、……」
会えなかった分、ゆっくりと話をしたいところなのに。
やっぱり、居酒屋を出たところで、解散するべきだった。
俺の選択ミスだ。
森野たちを帰さなかったコトに悔やんでいるオレに、鞍崎さんの言葉が続く。
「あぁ、そっか。邪魔して、ごめんな」
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