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第7話 そんな理由は有り得ない

 邪魔?  邪魔なのは、テーブルに酒やつまみを広げているこいつらであって、断じて鞍崎さんじゃない。 「何謝ってるんですか? 鞍崎さん、謝る必要なくないですか?」  鞍崎さんの声が聞けたコトが嬉しくて、優しい気遣いが嬉しくて、オレの顔は、思わずニヤける。  鞍崎さんが可愛く思え、堪らなくなる。 「邪魔だなんて思わないし、電話もらえて嬉しいですよ」  思ったことを素直に口にするオレに、鞍崎さんが電話の先で照れている気がした。 「どうしたんですか?」  鞍崎さんのコトだから、何かしらの用件があっての電話だと感じ、問うた。 「あ、いや………」  暫しの沈黙のあとに、淀む声。  もしかして。  何の用もなく、ただ声が聞きたいが為に、電話してくれた…とか?  思いついた考えに、頭を振るった。  真面目な性格で、どちらかというと硬派。  明日、会社にいけば会えるし、話もできる。  たった数時間、待てないわけがないし、それほどまでの寂しがり屋だとも思えない。  オレなら、我慢できずに電話をするかもしれないが、大人な鞍崎さんが、そんな子供染みた理由で電話を掛けてきてくれる訳がない……よな。 「育ちゃーん」  背後から萌の声が、飛び込んできた。  声と同時に、身体ごとぶつかってきた萌の腕が、オレの首をロックする。 「ぅおっ、ちょ、なにっ」  30センチほど小さな萌に、ぶら下がられたオレは自然と後ろへと歩まされ、室内に戻された。  さほど重くはないが、バランスを崩したオレは、床に座り込む。 「なになに? 彼女ぉ~?」  キラッキラに瞳を瞬かせ、肉食獣が涎でも垂らしているかのような顔の萌が背後からオレを覗き込む。

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