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第8話 オレは、被害者だ
めんどくせぇなぁ。
邪魔すんなっ。
折角の鞍崎さんとの電話を邪魔されたオレは、心底不機嫌な声を返した。
「違ぇよ。会社の先輩で、こっちだ」
ムッとした顔のままに萌を睨み、彼氏を意味する親指を立てて見せた。
萌も森野も、オレがゲイであることは、知っていた。
恋人という言葉から連想されたのが、“彼女”という単語だったらしいが、オレの仕草に、萌は、あぁそっかと、納得の顔を浮かべる。
するりと伸びてきた森野の手が、電話を掴み取り、喋り始める。
「どうもぉ。友人代表、森野れすっ」
「ぁあ……もうっ」
苛々しながら、森野から電話を奪おうと腕を伸ばすオレの腰に、前に回り込んできた萌が、とすんと股がる。
「ねぇねぇ、本当に、興味ないのー?」
森野に伸ばしたオレの手首は、萌に捕まえられ、そのまま胸許へと導かれる。
ぽよんとした張りある大きな胸に、触れる五指。
何の魅力も感じないし、何の性的興奮もない。
「ほれほれ」
腕を引こうとするオレに、萌はさらに胸を押し付ける。
「……って、こら!育っ」
森野の怒り声が飛んでくきた。
「萌のおっぱい、揉んでんじゃねぇよっ」
声に瞳を向けるオレに、森野はスマートフォンを投げ捨て、萌の胸に触れていた手を弾く。
オレ被害者っ。
完全なる、被害者っ。
「違ぇよっ。これは、萌が…ぁ……っ」
森野に現状を説明しようと口を開いたオレに、萌の手が股間を鷲掴む。
むにゅんと握られる股間に、鼻から空気が抜けた。
「触って欲しそうな顔でもしてたってか?」
怒り心頭な森野に、急な刺激にアホ面を曝すオレ。
それでも、説明しようとするオレの股間がもにゅもにゅと揉みしだかれる。
「んなっ………ぁっ…」
当たり前だが、そんなところを揉まれれば、力も抜ける。
「萌も萌だっ。俺が居るのに、何してんだよっ。触らせてんじゃねぇよっ。こいつがゲイだからって、して良いコトとダメなコトがあるだろがっ」
ギャンギャンと吠え怒る森野に、萌はどこ吹く風だ。
「本当だぁ。反応悪ぅ~」
人差し指と親指で、ぐにぐにと人の股間を摘まみ揉みながら、萌は詰まらなそうに声を漏らす。
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